デジタルパブリッシング専門セミナー |
今年の秋、電子書籍業界にまたひとつ大きな波が訪れようとしている。書籍、コミックに次いで、いよいよ雑誌のデジタル化が本格的に始まりそうだ。
リード エグシビション ジャパン(株)は6~9日、東京・有明の国際展示場(東京ビックサイト)で“デジタル パブリッシングフェア2006”を開催した。会場ではVol.1とVol.2でお伝えしたブース展示に加えて、11の専門セミナーが開かれていた。
今回はその中のセミナーのひとつで、(株)小学館のネット・メディア・センター執行役員兼ゼネラル・マネージャーである岩本敏(いわもとさとし)氏が担当した、“読書スタイルが変わる? ~電子雑誌という新たな波~”という講演をレポートしよう。
紙の雑誌と同じ内容を電子化して販売
小学館、岩本敏氏 |
岩本氏によれば、小学館は2006年秋より一部の雑誌を電子化し、(株)富士山マガジンサービスが手掛ける雑誌の国内向けオンライン販売サービス“Fujisan.co.jp”を通じて提供していくという。
Fujisan.co.jpが採用する電子雑誌の閲覧ソフトは、米ジニオ・システムズ社(Zinio Systems)の『Zinio Reader(ジニオ・リーダー)』(以下、Zinio)で、配布時のファイル形式は独自のZinio Readerマガジン形式だ。
Zinioの米国版ウェブサイト |
日本ではあまりなじみのないZinioだが、実は欧米では『BusinessWeek』『PC Magazine』など500誌以上を取り扱っているという実績がある。米アップルコンピュータ社の『Power Mac G5』などにもリーダーがプレインストールされている状況だ(日本国内で販売されているMacには含まれていない)。
岩本氏はZinioを選んだ最大の理由として、「DTPで作成したデータを元に電子化するので編集部に新たな負担が発生しない。従来、電子雑誌を作ろうとすると、例外なく制作コストがかかっていたのでやりたくてもできなかった」と人的/金銭的なコスト面でのメリットを挙げる。
そのほか欧米での実績、紙メディアのような感覚でページをめくれる、記事や広告とウェブサイトを連動させられるといった点にも注目しているという。ちなみに岩本氏は、小学館はZinioに限らず同じような体裁で扱える販売ルートがあれば、コンテンツを提供していく意思があるとも語った。
Zinio Readerではページをめくる際、紙が動くようなビジュアルエフェクトが適用される |