Office 2007では10年ぶりにデスクトップアプリケーションのUIが変更されるなど、さまざまな改良が加えられた。画面は『Excel 2007』 |
米マイクロソフト社は2006年末の出荷開始を予定している次期オフィス製品“the 2007 Microsoft Office system”(Office 2007)の日本語版ベータ2を一般にも公開している。10年ぶりとなるWordやExcelのUI変更、サーバーソフトの大幅な拡張など、Office 2007の特徴について、短期集中連載にてレポートする。
Office 2007の要点は、表計算やワープロなどのクライアントソフト(デスクトップアプリケーション)側のユーザーインタフェースの大改良と、サーバー側の機能の充実にある。従来バージョンのOfficeも、“Office System”という名称でシステムとしての機能を打ち出していた。しかし肝心のOfficeのサーバーソフト群は、それほど普及しているという状態ではなかった。そこで多くのユーザーへのインタビューを通じてシステムとして必要な機能を洗い出して、Office 2007上で実現している。
Office 2007のソフトウェア構成。一般に“Office”と聞いてイメージされるデスクトップアプリケーションはオレンジの部分。青部分のサーバーソフトもOffice 2007の一部である(以下のスライドはOffice 2007記者説明会より引用) |
マイクロソフト(株)インフォメーションワーカービジネス本部 本部長の横井伸好氏は、Office 2007についてこう語る。「Office 2007はインフォメーションワーカーの生産性に貢献する豊富なデスクトップ製品と、高度なコミュニケーション・コラボレーションを支える基盤としてのサーバー製品、さらに柔軟な利用形態に対応できるサービスからなる、一連のシステムに成長している。まだまだ多くのユーザーが、Officeはデスクトップアプリケーションのスイートパッケージの名称と思っている。しかしOffice 2007からは、本格的に企業で利用するシステムとして認識してもらえるだけの機能を用意した」
Officeの変遷。前バージョンのOffice 2003から“Office System”を名乗っていたが、Office 2007では、デスクトップアプリケーションとサーバーの連携が大きく強化された |
ではOffice 2007はシステムとして機能するために、どのような改良が行なわれたのだろうか? それを理解するには、Office 2007の中核となるサーバーソフトの改良について理解する必要があるだろう。
サーバーの中核はSharePoint Server 2007
SharePoint Server 2007のトップ画面 |
Office 2007のサーバーソフトの中核となるのは、『Microsoft SharePoint Server 2007』である。以前バージョンである『SharePoint Portal Server 2003』(以下SharePoint 2007)は、ポータルという名称が示すように、イントラネット向けの統合管理機能“Windows SharePoint Service”(WSS)を提供する企業内ポータルソフトであった。しかし、新しいSharePoint 2007ではポータル機能だけでなく、オフィスでの非定型業務に必要なシステムへと進化した。
SharePoint Server2007の機能領域 |
ウェブページや各種ドキュメント、電子メールといった現在のビジネスに重要な役割を果たす非定型情報は、今までユーザー個々のパソコン上に蓄積されたり、ファイルサーバーなどに蓄積されていた。そのため、総合的に検索したり、再利用を行なうのが難しかった。そこでOffice 2007では非定型情報と定型情報をSharePoint 2007上で一元的に扱い、必要な情報を従来よりも簡単に入手できるようになっている。
新しい検索エンジンを使って強化されたSharePoint 2007の検索機能 |
SharePoint 2007で最も重要視されたのが、検索機能だ。検索機能にはWindows VistaやMSN Searchなどで使われている検索エンジンが採用されている。と言ってもまったく同じものではなく、検索のランキング付けなどが業務用途向けにチューニングされている。検索では対象となるデータをクロール(チェック)してインデックスに登録していく。クロール時にはあまりCPUパワーを必要としないように設計されている。
MSN Searchと同じ検索エンジンがSharePointにも入っている。これにより、サーバーやデータベース上のさまざまなドキュメントを検索エンジンと同じ精度で検索できる |
またSharePoint 2007では、バックエンドにあるデータベース(SQL ServerやOracleなど)に手軽にアクセスして、データを表示する“ビジネスデータカタログ”なる機能がある。データベースへの接続方法などをXML形式の“アプリケーション定義ファイル”に記述しておくと、難しいSQL文などを使わなくても簡単にデータベースにアクセスして、キーワードを元に検索したデータを表示できる。
SharePoint Server2007で特に注目される“ビジネスデータカタログ”。バックエンドのデータベースのデータを簡単に検索できる |
“スライドライブラリ”と呼ばれるPowerPointのスライド管理も新しい機能だ。この機能では、PowerPointのスライドをサーバー側にアップロードしておくと、ほかのユーザーがスライド中の任意のページを自由に再利用して、新しいプレゼンテーションファイルを作れる。またファイルやアイテム単位でアクセス権限が設定できる。ファイルのバージョン管理機能も強化されている。メジャーバージョンだけでなく、マイナーバージョンをつけて管理できるようになり、より細かい管理が可能となった。
SharePoint Serverでは、ファイル更新をメジャーバージョンだけでなくマイナーバージョンでも管理できる |
SharePoint 2007では、サーバー上のファイルや情報のアップデートは、電子メールだけでなくRSSを使っても配信される。RSS受信をサポートした“Outlook 2007”で、更新の有無を簡単に確認できる。
プロジェクト管理機能も新しくなった。プロジェクト管理ソフトの定番“Microsoft Project Server”のような“ガントチャート”形式の表示により、プロジェクトの進捗把握が容易に行なえるようになった。ただし“Lite版”という位置づけのため、Project Serverのようにスケジュールの遅延や変更など細かなことはできない。あくまでもスケジュールがガントチャートで表示されるだけだ。
これら以外にもオプションとして、Excelの計算機能をサーバー側で処理する“Excelサービス”、InfoPathのフォームのデータ入力をウェブブラウザーで行なえる“Formsサービス”などのサービスが用意されている。