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「やっぱり、自分の会社は自分の子供みたいなものなんです」─米Mountain View Data Cliff Miller氏

2003年03月14日 07時14分更新

文● 編集部 阿蘇直樹

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[編集部] 『PowerCockpit』は、Millerさんが米Turbolinuxにいらっしゃった時代から開発をスタートされた製品とのお話ですが、今回この資産を買収された経緯について教えてください。
[Miller氏] 詳細を話すときりがないのですが(笑)、1999年、2000年あたりに当時のTurbolinuxが資金調達をしまして、当時はインターネットバブルの時でしたが、そのときにかなりの資金を頂いたわけです。アメリカのベンチャーキャピタル(V.C)は、やはり向こうのやり方で、Founder(創業者)とManagement(経営管理)は違うよ、という考え方が多いんです。それで新しいマネージメントチームを入れたのですが、私とは意見があまり合わなかったわけです。ですのでバトンタッチして、まあがんばってね、という感じで任せたわけです。
本当は、Turbolinuxという会社は自分の子供みたいなものなんですよね。8年間やって、ちゃんと黒字を出しながら作ってきた会社ですので、ほかの人が入ってきて、その人たちのやり方が間違っていると思ったら、ちょっと感情的になっちゃうんですね。Turbolinuxはアジアがメインで、それからLinuxビジネスということもあって、いくつかの特殊な要素がありました。そういった部分で、そのV.Cが入れた方のやり方と、私の意見がかなり違っていたわけです。結局、米Turbolinuxはあれからうまくいかなかったですよね。結論としてはもう閉めたわけですから。非常に残念なんですけどね。
話が戻りますが、去年の夏の時点で、旧TurbolinuxではV.Cが入れたマネージメントチームが会社を売ると決めたわけですね。それで2つにわけて、TurbolinuxのブランドをSRAさんに売って、それからIP(知的財産)がもう1つのパーツだったわけですが、その資産もオークションのような感じで売りに出したわけです。そこで色々な会社が交渉して、我々も関心があったので参加したわけですが、我々のオファーが一番よかったという結論になりますね。

アジア市場はとにかく面白い。インフラが違うと新しいビジネスが生まれる

[編集部] 今のお話の中で、当時の米TurbolinuxにV.Cが入れた経営陣と意見が合わなかったというお話がありましたが、当時Millerさんが目指していらしたものというのはどういったものだったのでしょうか。また、それはMountain View Dataを設立されても変わらず同じものを目指していらっしゃるのでしょうか。
[Miller氏] Turbolinuxを作った時には、やはり自分の経験を生かすことを考えました。ですから、日本やアジアを中心にして、重心をアジアにおいてやろうとしていたんです。一方、アメリカの一般的なハイテクのやり方ですと、アメリカがすべて中心になって、あまりアジアのことはよく分からないんです。あくまで一般論としてですが。ですので、アジアでビジネスをしている会社でしたら、アジアのことが分かって、あるいは少なくとも理解したい、好きになりたい、知りたいという気持ちが非常に大事だと思います。それが欠けているととうまくいくわけがないと思うんです。ですから、あくまで個人的な感想ですが、ターボリナックス(株)は今、SRAさんがやっていらっしゃるから、日本ではきっとうまくいくでしょう。よかったんじゃないでしょうか。
MVDの場合も、最初からアメリカと日本、中国でビジネスやろうと思っていまして、オフィスは3カ所にほぼ同時にオープンしたんです。2000年の10月、11月、12月にそれぞれ開設しました。アジアの市場は面白いんですよね。特に中国は、とにかく大きいですよね。さらに、ほかの市場と違って、基盤になるインフラがなかったりするんですね。たとえば電話の場合は、中国は固定回線よりも携帯電話の数が多いですね。固定回線インフラが弱いと、自然にみんな携帯になるんです。パソコンが入っていったときも、日本とかアメリカは、インテルの286や386、486とかがありましたよね。中国はいきなりPentiumです。そういう背景があるので、ソフトウェアビジネスのモデルでも、場合によっては世界のほかの地域とは違うことができるんです。たとえば、我々に近い分野ですと、SSP(Storage Service Provider)ですとかASP(Application Service Provider)といった、アウトソーシングのビジネスです。中国では、中小企業だけでなく大企業でも、ITの部門がないところがたくさんあるんですよ。ですから今後そういったビジネスが立ち上がる可能性があります。とにかくインフラが違うから、ビジネスの体系も日本やアメリカとは違ってくる可能性が高いと思うんです。
我々の開発は、現在中国を中心に行なっています。エンジニアはアメリカにも日本にもいますが、実際の開発をしているのは中国です。日本やアメリカはカスタマイズが中心で、ソフトウェアのコアな部分は中国で開発しています。中国では、我々のプログラミングスタッフはものすごく優秀で、中国の一流大学の人が入っています。清華大学や北京大学から、開発者がやってきているんですよ。それから、これは記者発表会ではお話ししなかったのですが、『PowerCockpit』は開発に吉井(Mountain View Data CTOの吉井一友氏)が参加していますので、日本語化されているというのは非常に大きな特徴かも知れません。私と違って完璧な日本語ですね(笑)。
[編集部] 製品の開発のお話が出ましたが、『PowerCockpit』資産を買収されたことで、既存の『MVD Sync』や『MVD Powered NAS』といったストレージ関係のソフトウェア製品はどのように位置づけられるようになるのでしょうか。
[Miller氏] ストレージの部分は非常に重要な財産です。今後それがさらにコンプリートなものになっていくわけです。サーバ管理+ネットワークストレージが入るわけです。ですから、見方によっては『PowerCockpit』がもっとフルなシステムになっていくということもできます。『PowerCockpit』は、これは発表会では言わなかったのですが、場合によってはストレージのリソースマネジメントのフレームワークにもなれるんですね。つまり、NASやSyncといった、ストレージモジュールを管理するためのシステムになれるわけです。非常に向いています。
[編集部] 今日はどうもありがとうございました。

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