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ThinkPad X30(2672-4HJ)

ThinkPad X30(2672-4HJ)

2003年02月21日 00時29分更新

文● 松本 俊哉

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X30のハードウェアと
ラインナップ構成

ダイバーシティアンテナ
写真7 液晶の左右両側面に無線LANのダイバーシティアンテナを内蔵。マザーボード上に内蔵するアンテナではユーザーの手が障害物となるが、やや高めの位置に配置することで速度の低下とリンク切れを防ぐ効果がある。

 今回取り上げているX30のモデル「2672-4HJ」は、シリーズの最上位機種に当たり、IEEE802.11bの無線LANとBluetooth、Ethernetという3通りのネットワークアダプタを装備した豪華仕様になっている。外観はX2x系と大きな変化がないようにも見えるが、内部の設計は一新され、筐体も数ミリではあるが小型化が進んでいる。チップセットは830MPから830MGに変わり、同時にビデオ機能がチップセット内蔵となった。4ピンのIEEE1394ポートを装備するのは従来どおりだが、USBが1.1のままなのは残念なところ。X31でのUSB 2.0対応に期待したい。

 国際標準化機構(ISO)定義によるキーピッチ18.5mmのフルサイズキーボードはもちろん健在で、人によってはタッチが柔らかくなったと感じるかもしれないが、十分な打鍵感のあるかっちりした作りは変わらない。地味な存在ながら、暗闇で手元を照らす便利なキーボードライトも液晶枠の内側上部に埋め込まれている。ただし、X2xでその上に装備されていたウルトラポートは省略されている。



キーボード
写真8 モバイルサイズながら、デスクトップPCに引けをとらないキーピッチとストローク、配列を実現したキーボード。いびつなキー配置はなく、やや硬質なクリック感と相まって打ちやすく仕上がっている。

 X30のラインナップは、2672-4HJのほかにもCPUの違い、無線LAN機能、USB接続のFDD、セキュリティチップの有無で6タイプがあり、標準OSにWindows 2000を搭載したモデルも4タイプ用意されている。価格はすべてオープンプライスだが、店頭価格はIBMの直販サイトなどを参考にしていただきたい。

個人/個体認証とセキュリティにフォーカス

日本IBM
BP&PC製品事業部
竹村 譲氏


 一部の大手がホームサーバ/ネットワーク構想を推し進めるなか、従来路線を堅守しているかのように見える日本IBM。しかし、IBMは独自の理論と方針のもと、ThinkPad本来の道具としての実用性の追求に加えて、より近未来を見据えた機能を与えようとしている。

 同社BP&PC製品事業部・竹村氏は、インタビューの席上でこう切り出した。「多くの企業がオンラインでの在庫管理や売買、つまりEコマース(電子商取り引き)を始めていますよね。それは、人間が24時間常駐していなくても、サーバさえあれば商売が成立するからです。人件費と労力が大幅に削減できるからなんですね。ただ、人間が介在しないと、取り引き相手が本人に間違いないことを確かめるのが難しくなります。昼間なら電話で声を聞くをこともできますが、無人の夜間にも取り引きできるのがEコマースの良さなわけですから、アクセスしてきたクライアントが契約相手に間違いないことを確かめる手段が必要になるんです」

 この話は個人ユーザーにも当てはまるという。例えば、オークションサイトで出品/落札するのもEコマースのひとつには違いない。現在もIDとパスワードの組み合わせによって守られてはいるが、逆に言えば、それさえ盗めば本人に成りすますことは簡単なのだ。そこでIBMはもう一歩突き詰めて、ハードウェア上に暗号鍵を持つセキュリティチップを載せることで、個人と個体の認証精度を高めようとしている。

 セキュリティチップを搭載したPCに「IBM Client Security Software」を導入すると、チップのEEPROM内にパスワードが保護され、ログオンユーザー認証はもちろん、ブラウザのSSLやメールの暗号化/電子署名などもハードウェアによる暗号化処理が行われる。HDDの内部を読み取ってもパスワードが漏れることはないので、個人/個体の認証が非常に強固なものとなるのだ。竹村氏は、「近い将来IPv6が実用に入れば、身の回りのあらゆるものにIPアドレスを割り振ることができます。そのときに認証とセキュリティはますます重要視されるでしょう。IBMはその近い将来のことを考えています」と続けている。

 また、よりエンドユーザーの関心の高い話題としては、IBMが独自に用意したソフトウェア群にも注目したい。竹村氏の言葉を借りると、PCとネットワークインフラの普及拡大にともなって、セキュリティはもちろんのこと、PCはスキルの低いユーザーにも使いやすいインターフェイスを持っている必要がある。ThinkPadのネットワーク接続管理ツール「IBM Access Connections」とバックアップ/環境復元ツール「IBM Rapid Restore PC」という2つのソフトウェアは、ユーザーインターフェイスや操作方法自体は簡単に作られているが、企業などの大規模なPC導入の際に管理者の手間を軽減したり、あるいはユーザーレベルでの活用と復元を合理化する設計がされている。

モデル図
オートノミックコンピューティングを説明するフレームワーク。画像をクリックすると当該記事に移動します。
 そして、将来の展望を述べる竹村氏の口からは、「オートノミック」という言葉が飛び出した。オートノミックとは自律を意味し、自己管理するPCを指している。そこだけを聞くと物語世界の話のようだが、例えば有線のEthernetケーブルを抜いた瞬間に、PCが無線LANのアクセスポイントを探し出して、ユーザーの気がつかないうちにネットワークへの再接続が完了する。これも一種のオートノミック・コンピューティングだ。ThinkPadでいえば、Access Connectionsがその機能を実装することになるだろう。常時接続環境の発展、ユビキタス化に呼応して、IBMはPCのオートノミック化に注力を始めている。

ThinkPad X30(2672-4HJ)の主なスペック
製品名 ThinkPad X30(2672-4HJ)
CPU Mobile PentiumIII-M-1.20GHz
チップセット Intel 830MG
メモリ(最大) SDRAM 256MB(1024MB)
ディスプレイ 12.1インチTFT液晶(1024×768ドット)
ビデオ チップセット内蔵
HDD 40GB
FDD オプション
光メディアドライブ オプション
スロット PCカード(TypeII×1)、CF TypeII
I/O Bluetooth 1.1、USB 1.1×2、IEEE1394、パラレル、外部ディスプレイ、IrDA 1.1、モデム、Ethernet、ヘッドフォン出力、ライン入力、マイク入力、拡張バスコネクタ
通信 10/100BASE-TX、無線LAN(IEEE802.11b)
バッテリ駆動時間 約4.6時間
サイズ(W×D×H) 273×223×24.9~30.2mm
重量 約1.66kg
OS Windows XP Professional
アプリケーション PC-MM1クレードル活用、HD革命/BackUp Lite、乗換案内 時刻表対応版、ブロードバンドチェンジャーほか

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