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デジタルカメラの“基本のホ” デジタルカメラに最適の電池はどれだ!

デジタルカメラの“基本のホ” デジタルカメラに最適の電池はどれだ!

2002年07月20日 00時02分更新

文● アスキーPC Explorer編集部・行正 和義&山崎 敦

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大容量化する単3電池

単3電池の構造
図1 単3電池の構造。アルカリ乾電池やニッケル乾電池/ニッケルマンガン乾電池は円筒容器に各部材は底面(マイナス側)がら挿入してフタをしている。ニッケル水素充電池やリチウム乾電池はシート状の正極と負極を巻いて円筒容器に収めている。
 主な単3電池の構造を図1に示す。現在のアルカリ乾電池は非常にシンプルな構造となっており、プラス側端子は円筒ケースと一体化され、底部から正極や負極の材料を挿入し、正極/負極の絶縁材とマイナス側端子で封入している。同種の素材を用いる限り、電池容量は電極物質の量に比例するので、円筒の内側に隙間なく正極材が詰め込まれる。これに対し、ニッケル水素充電池やニッカド充電池では、電池は正極と負極が重なったシート状の素材を螺旋状に巻いて円筒容器に収めている。一次電池でも単3型リチウム電池はこの方法を用いているが、円筒容器に部材を封入するアルカリ電池などに比べて構造が複雑な分、価格的には高くなってしまう。
 電池は化学反応で電力を発生させており、電極の素材に関しては個々の企業秘密も関わってくるので詳細は不明な点も多いが、概要としては図2のようになる。もちろん電極素材の組み合わせだけではなく、細かな技術が投入されている。例えば、大容量化のためには電極材が多いほどいいが、アルカリ乾電池も含めて単3電池のケース内にはほとんど隙間なく詰め込まれており、すでにケースの肉厚を薄くするなどして量を稼いでいる状況だ。充填密度を上げるにも、密度を上げれば水素イオンの流れが滞り、電池から大電流を一度に取り出しにくくなる。東芝電池のGigaEnergyでは、正極材料を結晶の層状構造にするなどして水素イオンの流れをスムーズにしているという。


正極負極電解液電圧
アルカリ乾電池二酸化マンガン亜鉛水酸化カリウム1.5V
ニッケル乾電池
(東芝電池 GigaEnergy)
オキシ水酸化ニッケル亜鉛水酸化カリウム1.5V
ニッケルマンガン乾電池
(松下電池工業)
オキシ水酸化ニッケル
+二酸化マンガン
亜鉛水酸化カリウム1.5V
リチウム乾電池
(富士写真フイルム)
リチウム化合物炭素材料有機電解液1.5V
ニッケル水素充電池オキシ水酸化ニッケル水素吸蔵合金水酸化カリウム1.2V

いかに瞬間的に大電流を供給するか

消費電力と経過時間の関係
図3 消費電力と経過時間の関係。デジタルカメラはズーム操作やフラッシュのチャージのため、電力消費が一時的に増大する。
 デジタルカメラにおける電池駆動時間を考える際に重要なのが、パルス放電による電圧低下とカットオフ電圧の問題だ。
 デジタルカメラの場合、消費する電力は一定ではなく、例えばズーム動作をさせたり、フラッシュのためのコンデンサのチャージを行えば、その時のみ消費電流が増加する。これがいわゆるパルス放電で、起電力の弱くなった電池では電圧が急激に低下してしまい、機器動作の最低電圧を維持できなくなるわけだ。ニッケル乾電池やニッケルマンガン乾電池、新しいアルカリ乾電池などがデジタルカメラに向いているということをうたっているのは、従来のアルカリ電池に比べて瞬間的な放電の際にも電圧低下を起こさないように工夫がなされているためだ(図3)。
 電池が弱くなってきて電圧が下がれば、カメラ自体が動作しなくなるわけだが、ほとんどのデジタルカメラはローパワー(警告)表示ができる程度の電力は残している。中には液晶表示やズーム動作もできるものの、シャッターだけ切れないという製品もある。完全に機器がダウンするまでバッテリ駆動をすれば、メモリへのデータ書き込み中に電圧不足に陥ってカードを壊してしまうといったこともありえるためだ。カメラがシャットダウンするときの電圧をカットオフ電圧と呼ぶわけだが、どれくらいの電圧レベルで電源を切るかはカメラによってさまざまだ。これに対し、電池のほうもその種類ごとに電圧降下のパターンは異なる。



電池の放電特性テスト結果
図4 電池の放電特性テスト結果。アルカリ乾電池:松下電池「パナソニックアルカリ(金)」/ニッケル乾電池:東芝電池「GigaEnergy」/ニッケルマンガン乾電池:松下電池「ニッケルマンガン乾電池」/ニッケル水素充電池:松下電池「メタハイ2000」。

 図4は一定の負荷(電動ラジコンカー用の模型用モーター、田宮模型製「RS-540 スポーツチューン」)を電池1本で駆動させつつ電圧を計測した結果だ。時間が経つにつれてアルカリ電池はゆっくりと電圧が下がってゆくのに対し、ニッケル乾電池/ニッケルマンガン乾電池の場合は比較的高い電圧がしばらく続いたのちに急速に電圧降下を起こしている。ただし、ニッケル乾電池に比べ、ニッケルマンガン乾電池は電圧が下がりつつも多少長続きしている。リチウム電池は大容量だがアルカリ乾電池のようにしだいに電圧が低下し、ニッケル水素充電池はニッケル乾電池/ニッケルマンガン乾電池と同様に高い電圧を維持して急激な電圧低下を起こす。
 電池は内部に電力を多く蓄えているかだけではなく、安定した電圧を持続して供給できるかという点も重要だ。その点においては、ニッケル乾電池/ニッケルマンガン乾電池/ニッケル水素充電池は高い性能を持つと言えるだろう。デジタルカメラのように比較的高いカットオフ電圧の機器の場合、それだけメリットが大きいわけだ。
 ただし、大電流を必要とせず、電圧が低下してもそれなりに使えてしまうような機器(携帯ゲーム機や音楽プレーヤ、ハンドライトなど)であれば、電圧はしだいに下がっていくもののアルカリ乾電池のほうが長持ちする。グラフを見ると分かるように、例えば0.8V以下でも動作する機器ならアルカリ電池のほうが長く利用できるわけだ。同じことはニッケル乾電池とニッケルマンガン乾電池の特性についても言える。負荷にもよるわけだが、今回のテストにおいて1Vでカットオフするならばニッケル乾電池のほうが長持ちするが、0.8V以下でも動作する機器ならニッケルマンガン乾電池のほうが長持ちすることになる。
 一般にデジタルカメラの中でも、単3電池2本で動くものはカットオフ電圧が高く、単3電池4本のものは比較的低い傾向にあるため、デジタルカメラであっても新型電池のほうが必ずしも長時間利用できるわけではないことを注意しておこう。

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