最近のデジタルカメラは高機能化が進み、さまざまな機能がカメラに装備されている。ひと昔前のデジタルカメラならば撮影モードはプログラムオートのみ、ストロボの発光機能もオン/オフの切り替えしかない機種も多かった。しかし、最近の機種には絞り優先やシャッター優先、マニュアルといった露出モードや、夜景やポートレート、スポーツといった撮影シーンに合わせてカメラが適正な絞りとシャッターの組み合わせを選ぶシーン選択方式など、銀塩の一眼レフカメラと同等の機能を搭載している。単にプログラムオートで撮影するだけでなく、これらの機能を使いこなすことでさまざまな凝った撮影が可能となる。デジタルカメラでの撮影の基本技術を紹介する5回目である今回は、ほとんどのデジタルカメラに装備されている「マクロ」機能をちょっと掘り下げてみよう。
レンズを移動して近くにピントを合わせる
作例1 通常の撮影モードのままでは近景にはピントが合わない(上)。機種によって違いはあるが、20~30cmよりも近い被写体を撮るときにはマクロモードへの切り替えを忘れないようにしよう(下)。 |
レンズの構造的には、ピント合わせの際に前側のレンズを前方に繰り出せば繰り出すほど近くの被写体にピントが合うようになる。しかし、大きく繰り出す(伸びる)レンズはそれなりにかさばってしまうため、小型軽量化が進むカメラには搭載しにくい。このため、多くのカメラではレンズ鏡胴内にある複数のレンズのうち1~数枚を移動させることで、近い距離でのみピントを合わせることができるようにしている。これがいわゆる「マクロモード」で、これによりピント合わせ用のレンズを大きく動かすことなしに近接撮影ができるわけだが、マクロモードのレンズ位置では逆に遠距離にピントが合わなくなることが多い。
といっても、デジタルカメラのすべてがそういった構造を採用するわけではない。例えばソニーのCyber-shotシリーズでは、マクロモードのままでも遠距離にピントを合わせることができる。これは実際には、マクロ/通常の切り替えが必要ないくらいピント合わせレンズの動作範囲が大きく取られているのだが、レンズの動く範囲が広いとピント合わせにかかる時間も大きくなるため、通常モードではソフトウェア的に動作範囲を制限してすばやい合焦を実現しているわけだ。
また、レンズを繰り出せば繰り出すほど画質が劣化する傾向にあるため、製品によってはマクロモードで数cmまで近づける製品もあれば、30cm程度までしか近づけないものもある。
ここで注意が1つ。マクロモードが使える焦点距離も要注意だ。デジタルカメラの機種によってはズーム全域でマクロ可能なものや、広角側のみや望遠側のみといったものもある。焦点距離によって最短撮影距離が変わる場合、ズームレンズを望遠側にすればするほど近くでピントが合わなくなる傾向にある。やはり自分の手持ちの機種のスペックはよく把握しておこう(作例2)。
なお、マクロでの広角/望遠の使い分けを考えると、単に小さいものを大きく写したいだけならば望遠+マクロのほうが拡大接写撮影に便利だ。ただし、風景を生かしつつ手前の花をアップに撮るといった用途では広角で利用することが多い。望遠/広角の全域でマクロが使えるのが理想的だが、前述したようにマクロモードでは望遠/広角のどちらか一方のみとなったり、最短撮影距離が変わってしまうカメラが多い。