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【WinHEC 2002 Vol.2】次世代I/Oバス規格“3GIO”の正式名称は“PCI Express”に

2002年04月19日 19時11分更新

文● 塩田紳二

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WinHECの2日目(米国時間17日)には、キーノートスピーチはなく、朝の8時からさまざまなセッションが始まる。展示会場のほうは、昼と夕方のみ開場となるため、午前中はセッションに出るしかないのである。筆者は、開発者ではないので、あちこちのセッションを見て回ったのだが、サーバーやデバイスドライバーのトラックは部屋が狭いせいもあってかなり混雑しており、席に座れず立ち見(というか床に座り込んでいる人のほうが多い)も出る。

WinHECの展示会場の様子
WinHECの展示会場の様子

ところがクライアントやマルチメディア関係のトラックは、会場が広いのだが、後ろ半分がほとんど空いている感じ。なんだか、マイクロソフトとユーザーの温度差を感じてしまう。かつてはWinHECといえば、パソコンを開発しているエンジニアが大勢詰めかけたものだが、どうもそういう雰囲気ではない。同じ開発者向けのコンファレンスでもインテルのIDFのほうがもっと活気がある。

展示会場にあった64bit版Windows XP。McKinleyの上で動作している
展示会場にあった64bit版Windows XP。McKinleyの上で動作している

日本の場合、(インテル(株)が主催する開発者向け会議の)“IDF Japan Spring 2002”と同時期の開催となったので、こちらには来ないエンジニアがいるのかもしれないが、ほんとにIDFへの出席が必要なら米国で2月に開催された(米インテル社主催の)IDFに出席しているはず。実際、日本のメーカーのエンジニアには何人もWinHECの会場で会った。

64bit版Windows XPを動作させているHPのMcKinleyマシン。手前のものが2プロセッサーで奥のマシンがシングルプロセッサー。手前のマシンのほうが薄型なのだが、実際にはラックマウントサイズなので奥行きがある
64bit版Windows XPを動作させているHPのMcKinleyマシン。手前のものが2プロセッサーで奥のマシンがシングルプロセッサー。手前のマシンのほうが薄型なのだが、実際にはラックマウントサイズなので奥行きがある

“3GIO”の正式名称が“PCI Express”に決定

本日は、PCIバスの仕様策定と管理を行なう団体である“PCI-SIG”のプレス向けの説明会があった。一番の話題は、“3GIO”の仮称で呼ばれていた次世代I/O規格の正式名称が決まったこと。この3GIOは、2001年の春のIDF(IDF Spring 2001)で最初の提案が行なわれ、“Arapahoe Work Group”(※1)が結成された。その後、秋のIDF(2001年8月)で概要が公開され、PCI-SIG(PCIバスを管理する団体)が、仕様の推進役となることが明かになった。

※1 Arapahoe(アラパホ):3GIO規格の開発コードネーム。

さて、その3GIOの正式名称だが“PCI Express”である。なんだか『Outlook Express』みたいでちょっと変な感じ。筆者としては、“ウルトラPCI”というのがいいと思うが、まあ、これはどうでもよい。

PCI-SIGが3GIOの推進役となるのには理由がある。技術的に見ると、3GIOはPCIのドライバーモデルを使うため、デバイスドライバーやその上に来るPlug & Play関連の技術は、従来のPCI用のものがそのまま使えるということ。政治的には、3GIOが登場することでPCIは急速に衰退し3GIOに置き換わってしまうために、PCI-SIGというグループ自体の存在価値がなくなってしまうことだ。新たに3GIO-SIGというものを作ってもいいのだろうが、PCI-SIGを作るのと同じ手間が再度必要で、かつ、すでに出来上がっているPCI業界自体も再度作り直しとなり、普及への阻害になる可能性もあるからだ。

PCI-SIGによる3GIO(PCI Express)の仕様公開までのスケジュール。今年6月には仕様を公開する予定
PCI-SIGによる3GIO(PCI Express)の仕様公開までのスケジュール。今年6月には仕様を公開する予定

というわけで3GIOは、PCI-SIGが推進役となった段階ですでに「PCI」と親戚関係にあるような名前を付けなくてはいけない運命を背負っていたのである。噂によると“シリアルPCI”というような名前の候補もあったようだが、結局“PCI Express”になってしまった。なんだか、ちょっと“軽い”感じがする名前である。これにはPCI-SIG側の思惑もあるようだ。PCI-SIGでは、サーバー向けに帯域の広い“PCI-X”規格を普及させようとしている最中で、全面的に3GIOへの転換が困難なのである。

PCI-SIGによる今後のスペック動向。今年後半からPCI-X 2.0と3GIO(PCI Express)が立ち上がりはじめる
PCI-SIGによる今後のスペック動向。今年後半からPCI-X 2.0と3GIO(PCI Express)が立ち上がりはじめる

そこで、サーバー向けはPCI-X(およびPCI-X2.0)にしておいて、デスクトップやノートから先に3GIOの普及をはかる考えなのである。従来、最新の広帯域なバス技術は、サーバーやワークステーションから採用され、ハードウェアやドライバーソフトが成熟してからデスクトップマシンなどに普及するというのが一般的なルート。しかし、3GIOはサーバーよりも先にデスクトップへ採用される予定だ。

このような形の、PCI Express対応デバイスを装着できるパソコンを作ることでユーザーがもっと簡単に拡張できるようになるこのような形の、PCI Express対応デバイスを装着できるパソコンを作ることでユーザーがもっと簡単に拡張できるようになる

なので、そのためにはあまり高性能を予感させる名前であってはまずいのである。例えば、ウルトラPCIやハイパーPCIではどう考えてもPCI-Xよりも速そうにみえてしまう。そこで、登場したのが“速そう”だけど“軽い”イメージを持つ“Express”である。Windows附属のメールソフトにOutlook Expressという名前がついているようにExpressにはいまや“簡易版”という印象がある。このために“軽く”感じてしまうわけだ(ファーストフード店でもすぐできるというイメージでこの語を使うことが多いがそれも影響しているのかも。米国には“Panda Express”という中華料理のファーストフードチェーン店があってWinHEC会場の近くにもある)。

PCI Expressを使ったデバイスの例。これはIDFなどで展示されたのと同じようなモックアップ。デバイス背面にはレールがあり、後ろには接続コネクターがある
PCI Expressを使ったデバイスの例。これはIDFなどで展示されたのと同じようなモックアップ。デバイス背面にはレールがあり、後ろには接続コネクターがある

というわけでPCI Expressとなってしまった3GIOだが、現在仕様のドラフト1.0が完成し、PCI-SIGメンバーへのレビューが行われているところ。2002年上半期の終わりには最初の仕様書が公開になる予定。

Windowsで無線アクセスをもっと簡単に

さて、2日目は無線関係のセッションがあったので、これについて話しておくことにしよう。事前に話が出ていたのは“Soft WiFi”というキーワード。なんのことなのかというと、無線LANなどを統一的に扱おうという話。実際、現在はIEEE 802.11bが主流だが、今後はIEEE 802.11aが主流になるとわれている。そのほかにセキュリティー拡張(IEEE 802.11i)や、2.4GHzでの高速化(IEEE 802.11g)などさまざまな規格が登場予定だ。未だ、無線LAN関連の規格は落ち着いてないといってもよい状態である。

マイクロソフトが開発中の“Soft WiFi”無線LANアーキテクチャー。クライアント側とアクセスポイント側があり,各種の規格の違いを吸収し統一的な扱いを可能にする。クライアント用、特に家庭向けは設定なしを目標としている
マイクロソフトが開発中の“Soft WiFi”無線LANアーキテクチャー。クライアント側とアクセスポイント側があり,各種の規格の違いを吸収し統一的な扱いを可能にする。クライアント用、特に家庭向けは設定なしを目標としている

この中での使い勝手を考えると、統一的なGUIやAPIを用意しておいて、上位のアプリケーションに影響を与えないようにしておかねばならない。その1つがWindows XPに組み込まれた無線LANのサポートだが、これも使い勝手はいまいちである。実際、WinHECの会場では無線LANによるインターネットアクセスが提供されているのだが、展示会場や個人で持ち込んだノートなど多数のアクセスポイントやクライアント(アドホックモードでみればこれも1つの接続先)があって、なかなかお目当てのアクセスポイントに接続できない。逆にアクセスポイントも規格が落ち着かないと設置してもすぐに置き換えしなければならず、これが普及を阻害してしまう。

そこでマイクロソフトは、クライアント側とアクセスポイント側のためにWindows用ソフトウェアモジュールの開発を行なっているという。これにより、各種の規格の違いを意識することなく、無線LANが使えるようになるというのがマイクロソフトの考えだ。特に家庭向けには、何も考えずに使えるというのを目的としたいようだ。これには1月のCESで披露した“Mira”のようなデバイスの接続に無線LANを使おうとしているからだと思われる。

もう1つの無線関係の話は、携帯電話とパソコンの接続である。“3G”と呼ばれる次世代携帯電話では数Mbpsという高速なデータ通信が可能になり、すでにその前触れとして海外では2.5Gと呼ばれる“GPRS”(GSM電話網を使うパケット通信)サービスが開始されている。このときに問題となるのは、Windowsはいまだに携帯電話機をモデムとしてしか扱えないことにある。つまりATコマンドを使って端末を初期化し、PPPを使ってTCP/IPのパケットを転送するわけである。

3G携帯電話とPCはBluetoothで接続し、端末とはEthernet経由のようにやりとりを行なう。携帯電話自体が持つ情報は、DHCPやSNMPで取得する仕組み
3G携帯電話とPCはBluetoothで接続し、端末とはEthernet経由のようにやりとりを行なう。携帯電話自体が持つ情報は、DHCPやSNMPで取得する仕組み

しかし、いま携帯電話やPHSを使ってアクセスしているかたなら分かるように、細かいATコマンドの違いで接続ができなかったり、モデムは通信中に回線状態などの情報をパソコン側から取得できないなどの問題がある。そこで3G携帯電話の普及にあわせて、このあたりを見直そうというのがこのセッションの提案で、スピーカーは英ボーダフォン・グループ社のエンジニア(もっともマイクロソフトが何もからんでいないわけではない)。

簡単にいうとEthernetのように3G携帯電話の通信を扱えるようにするわけだ。こうすることで、ユーザーはいまのダイヤルアップネットワークやリモートネットワークのダイアログから解放され、あたかも無線/有線LANを使っているように3G携帯電話によるデータ通信が行なえるようになる。3Gの携帯電話では、端末自体に最初からIPv6アドレスを割り当てるという話もあり、パソコンから見ると携帯電話からDHCP経由でIPアドレスの割当てを受けるといった構成になるようだ。

さて、明日は最終日。ビル・ゲイツ(Bill Gates)と米インテル社のポール・オッテリーニ()のスピーチがある。日本のIDF Japan Spring 2002では“Banias(※2)をエミュレートしたCPU”といったデモが行なわれた模様だが、オッテリーニは何を持ってくるのだろうか?

※2 Banias:米インテルが開発中のモバイルパソコン向けプロセッサー。低消費電力をポイントに開発されている。Pentium III-Mの後継として位置づけられ、2003年に登場予定。

USBコネクタに入るサウンドデバイス。スイスのMicronas Semiconductor Holding社のHeadset Adapter UAC3556B。これをヘッドセットのジャックの代わりにしてPCに直接接続させることができる
展示会場で見つけた、USBコネクタに入るサウンドデバイス。スイスのMicronas Semiconductor Holding社のHeadset Adapter UAC3556B。これをヘッドセットのジャックの代わりにしてPCに直接接続させることができる
会場では、チームになって、指定されたコンフィギュレーションのパソコンを組み立てる速さを競う“WinHEC WARS”が開催。周りが金網で囲まれ、4チームがその中で作業する
会場では、チームになって、指定されたコンフィギュレーションのパソコンを組み立てる速さを競う“WinHEC WARS”が開催。周りが金網で囲まれ、4チームがその中で作業する

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