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日本AMD、“MicroPGA”パッケージで薄型ノート市場へ──New Year Press Conferenceで

2002年01月18日 22時53分更新

文● 編集部 佐々木千之

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デスクトップ向け低消費電力機能は“Cool'n'Quiet”と命名

最後に、北アジアコンピュテーション製品グループマーケティング本部のサム・ローガン(Samuel Rogan)本部長が登壇した。ローガン氏は2001年12月に発表したSFFデスクトップ向け省電力・低発熱テクノロジー“Cool'n'Quiet(クールンクワイエット)テクノロジ”について説明した。

低消費電力版Athlon XPを搭載する、日立の『FLORA 330サイレントモデル』
低消費電力版Athlon XPを搭載する、日立の『FLORA 330サイレントモデル』

Cool'n'Quietテクノロジは、日本市場でデスクトップ市場で多く見られる、容積が7リットル程度のSFFパソコン向けに開発された技術。2001年12月に(株)日立製作所が発表した『FLORA 330サイレントモデル』(出荷は2002年2月)に初めて採用された低消費電力版Athlon XPに搭載している。

プロセッサーの省電力技術としては、ノート向けの“PowerNow(パワーナウ)テクノロジ”があるが、PowerNowが動作周波数と動作電圧の両方を制御するのに対して、Cool'n'Quietでは電圧は固定したまま動作周波数のみをアプリケーションの要求に応じて動的に変化させるというもの。この動作周波数をどのような段階でコントロールするかは、パソコンメーカーがBIOSを使って任意に設定できるという。周波数のみを制御する理由として、電圧まで変化させるとマザーボード側に対応する回路などが必要となり、コストアップを招くためと説明した。ノートではバッテリー寿命が大きな要素となるため、電圧まで制御する必要があるが、Qool'n'Quetはデスクトップの小型化、静音化のための技術であり、そこまでの必要はないという判断だ。

従来のモバイル用パッケージとMicroPGAパッケージを比較するローガン氏
従来のモバイル用パッケージとMicroPGAパッケージを比較するローガン氏

ローガン氏が続いて示したのが、B5サイズの小型ノートや薄型ノートへの採用を目指した新パッケージ“MicroPGA”。これまでAMDはノート向けにも、デスクトップと同じサイズの“Socket A”規格のプロセッサーを提供しているが、ソケットとプロセッサー、それにファンが加わるためかさばり、オールインワンの比較的大きめのノートにしか採用されなかった。MicroPGAパッケージはパッケージ面積を小型化するとともにピンも短くすることで、薄型ノートへの搭載を可能にするという。

従来のSocket A(モバイルDuron)とMicroPGAの比較(MicroPGAパッケージ上のダイは0.18μmプロセスのものであり、実際に製品発表の際には0.13μmプロセスになることに注意)
従来のSocket A(モバイルDuron)とMicroPGAの比較(MicroPGAパッケージ上のダイは0.18μmプロセスのものであり、実際に製品発表の際には0.13μmプロセスになることに注意)
パッケージを横から見たところ
パッケージを横から見たところ
パッケージ裏面のピンの様子
パッケージ裏面のピンの様子
MicroPGAパッケージとそのソケット。ソケットは上部に見えるねじを回転させて取り付け/取り外しを行なう仕組み
MicroPGAパッケージとそのソケット。ソケットは上部に見えるねじを回転させて取り付け/取り外しを行なう仕組み

インテルなどのノート向けプロセッサーでは、“MicroBGA”と呼ばれる、ピンの代わりにハンダ球がつき、マザーボードに直接ハンダ付けするタイプのパッケージが使われている。AMDがMicroBGAでなくMicroPGAを採用した理由として、「プロセッサーは比較的価格変動の激しい部品。ハンダ付けしてしまうと交換できず、市場の変化に迅速に対応しづらいが(※3)、ソケットなら製造工程の最後までプロセッサーを選択できるBTOのような柔軟な製造が可能になる」(コンピュテーション製品グループテクニカルマーケティング部小島洋一部長)と、パソコンメーカーが製造する上での有利さを挙げた。

※3 MicroBGAの場合、組み立ての工程上、ハンダ付け後に1、2週間マザーボードのまま、在庫の状態になってしまうという。

MicroPGAパッケージは、0.13μmプロセスで製造するAthlon“Thoroghbred”のモバイル向けプロセッサーで採用の予定で、モバイル向けのパッケージは従来のSocket AとMicroPGAの2種類になるとしている。

AMDの最新プロセッサーロードマップ。Thoroghbredの登場が近い。2月のIDFか3月のCeBITあたりで発表となるのではないだろうか
AMDの最新プロセッサーロードマップ。Thoroghbredの登場が近い。2月のIDFか3月のCeBITに合わせて発表となるのではないだろうか

あれほど積極的に0.13μmプロセスに投資していたインテルでさえ、2002年には設備投資を25%程度抑えることを明らかにしているのに対し、AMDはさらに設備投資額を増やそうとしていることは、注目に値する。インテルは2001年通年で純利益が前年比70%減ながら36億ドル(約4780億円)もあり、赤字のAMDと直接比較することは難しいが、不況の中でもAMDがプロセッサーシェアを増加させていることも確かで、需要の回復を見込んでさらに投資を増やすことで一気にインテルとの差を詰めようという勝負に出たということだろう。

もう1つ、低消費電力版Athlon XPに代表されるように、日本市場からの要求に対して、AMDが積極的に対応を始めたことも注目される。低消費電力版Athlon XPにしても、MicroPGAパッケージにしても、日本メーカーの要望に答える形で開発を行なったもので、日本で公開・発表を世界に先駆けて行なっている。これまでアメリカ市場中心の、パワーとスピードと価格というキーワードで製品開発を進めてきたAMDが、こうした細かいラインアップを広げ始めたのは、一種の余裕が出てきたと言えるのかもしれない。

ここ数年、“メガヘルツ戦争”を繰り広げてきたインテルとAMDだが、2002年はもう少し違った競争も見られそうだ。

おまけ。AMDがおみやげとして配布したロゴ入りせんべい。海苔に鮮やかにロゴが印刷(?)されていた
おまけ。AMDがおみやげとして配布したロゴ入りせんべい。海苔に鮮やかにロゴが印刷(?)されていた

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