オープニングセレモニーに続いて慶應義塾大学 環境情報学部 村井純教授による「インターネットの発展とオープンソースの役割」と題されたキーノートスピーチが行なわれた。
右に左に歩き回りながら、大きなゼスチャーでユーモアを交えて話す村井教授 |
ここでは、まずDNSの重要性が示された。巨大な分散システムであるインターネットにおいて、ルーティングはどのようなダメージがあっても動き続けるだろうが、グローバルなツリー構造を持つDNSの場合は、ルートがダメージを受けるとたいへんなことになる。村山教授は、Y2K問題の時に、DNSについてかなり考えたという。そしてLC参加者達に、「ぜひ新しいDNSを作ってもらいたい」と語りかけた。
またLinuxに関しては、ソースコードが教材になり、開発のおもしろさからビジネスが出てくるという、一番「きれいな形」を持っているのがLinuxだとした。
村井教授がもっとも力を入れているのがIPv6だが、これに関しては、現在はIPv4とNATという組み合わせもあるが、のNATはどうしても一時しのぎという側面がある点を指摘。デバイスごとにIPアドレスを割り当てることはできないからだ。村井教授は、デバイスごとにIPアドレスを割り当てる例としてインターネット自動車などの例を挙げた。インターネット自動車は、インターネットに接続された自動車で、そのセンサー情報などをインターネット上に発信し、それらのデータを集計/分析できるようになるもの。たとえばインターネット自動車のワイパーに取り付けたセンサーを集計すれば、現在雨が降っている地域がリアルタイムで、しかも細かい範囲でわかるわけだ(GPSも当然使用する)。また、自動車のABS(Antilock Brake System)にセンサーを取り付けておけば、一番急ブレーキがかかる交差点はどこか? といったこともわかってしまう。
IPv6とLinuxに関しては、カーネル2.1.8という早い時期にプロトコルスタックが実装されはしたが、その後メンテナンスがされないままIPv6の仕様が変わっていったため、もっとも使えないIPv6スタックとなってしまっていたことを述べた。
そして、こうした状況を踏まえてスタートしたUSAGIプロジェクトの紹介に移った。USAGIプロジェクトとは、“UniverSAl playGround for Ipv6”の略で、LinuxにIPv6プロトコルスタックやライブラリ、API、アプリケーションなどを提供しているプロジェクトだ。
最後に村井教授は、IPアドレスと、電話番号や自動車のライセンス、指紋、声紋、DNA識別などの「実空間(物理的)識別子との連携」を念頭に置いた「実空間インターネット」といった概念を紹介し、キーノートスピーチを終えた。
村井教授のキーノートスピーチは、日本と米国のインターネットががたった1本の線でしか繋がっていなかったインターネット草創期の逸話や、BSD 4.2の話、WIDEプロジェクトの名前の由来などマニアックな裏話が多数ちりばめられ、参加者が一同に笑ったり懐かしんだりの、たいへん楽しい雰囲気のものとなっていた。