このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

VAIO PCG-C1VJ

VAIO PCG-C1VJ

2000年11月20日 00時00分更新

文● 山崎

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

VAIO PCG-C1VJ

ソニー

オープンプライス

ビジュアル・コミュニケーションをコンセプトに掲げるソニーのノートPC「PCG-C1シリーズ」が2回目のフルモデルチェンジを果たし、第3世代製品となった。ハードウェアスペックをすべて変更し、見た目も中身も一新した前回のモデルチェンジ('99年9月)とは異なり、今回は中身だけをごっそり変更しての登場だ。ボディ自体はこれまでのC1をそのまま受け継ぎ、外見的な変化はボディカラーが、従来の紫がかったシルバーの塗色から、SRシリーズに近い白っぽい色に変更された程度にとどまる。しかしスペック的にはCPUにTransmetaの「Crusoe」を採用するなど、これまでとはまったく違うPCへと進化している。

長時間駆動を可能にするCrusoeの秘密

PCG-C1VJと標準バッテリ
11.1V/1800mAhというスペックの標準バッテリは、従来どおり背面の液晶パネルヒンジの間に収まる。Crusoe採用によって、スタイルを変えることなくバッテリ駆動時間の延長が果たされた。前モデルからボディサイズは変更されていないが、重量は少し軽くなり1kgを切って980gを実現している。

 ご存じのとおり、C1シリーズは携帯性に優れた非常にコンパクトなPCである。それゆえ大容量バッテリを搭載できず、バッテリ駆動時間が絶対的に短いという弱点を持つ。同じバッテリを利用していたB5ノートのPCG-N505シリーズもC1同様にバッテリ駆動時間の短さが最大のウィークポイントとされていたが、その後継機種としてデビューしたSRシリーズでは、標準で搭載するバッテリを3セルタイプから6セルタイプに変更してバッテリ容量を2倍にし、さらにSpeedStep対応のPentiumIIIを採用することで、駆動時間の大幅な延長を実現した。ところがコンパクトさをあくまでも追求したいC1としては、バッテリの大容量化という解決法をとることは避け、PC全体の消費電力を抑えることでバッテリ駆動の長時間化に取り組むことにした。そこで浮上したのがCrusoeの採用である。

 ここでCrusoeというCPUについて簡単に説明しておこう。Crusoeの最大の特徴は、パフォーマンスの追求ではなく、いかに低消費電力で動作するかを最も重視していることに尽きる。Crusoeがターゲットにしているのは、まさにバッテリ駆動時間を最優先すべきサブノートやミニノートといったPCなのである。どこにでも持ち運んで使えることが大事なサブノートやミニノートにとっては、当然デスクトップPCに迫るパフォーマンスよりもバッテリが長持ちすることが重視されており、CrusoeはまさにうってつけのCPUというわけだ。また、CrusoeというCPUはインターネットアプライアンスに代表されるような、PC以外の家電製品などもそのターゲットとしているためx86系CPUとの互換性をあまり重視していない。実際のところx86互換のCPUではなく、独自アーキテクチャを持つCPUだ。x86互換のCPUでは、どうしてもチップ自体で複雑な命令を解釈しなければならず、複雑なハードウェアを必要とする。ところが複雑なハードウェアというものはそれだけ多くのトランジスタを集積しなければならず、それに伴い消費電力も上昇する。Crusoeではそれを避けるためにより単純なアーキテクチャを採用して消費電力を抑え、ハードウェア的な互換性は実現していない。もちろんWindowsなどのx86用ソフトウェアを動かそうと思えば、x86命令を解釈しなければならないが、Crusoeはチップそのものはx86互換ではないため、x86命令をCrusoeアーキテクチャ上で動作するようにエミュレートする「CMS(Code Mofing Software)」というソフトウェアとセットで動作する。

 エミュレータというとそのパフォーマンスが気になるところだが、Crusoeは、PentiumやAthlonなどのRISCエンジンよりも単純な構造ながらはるかに効率のいいCPUエンジンである「VLIW(Very Long Instruction Word)エンジン」を利用し、それに最適化されたコードを生成するCMSの高いパフォーマンスによって、実クロックからあまり実効速度を低下させることなくエミュレーションを行うことに成功しているという。



PowerPanelのインターフェイス
タスクトレイに常駐する電源管理ユーティリティ「PowerPanel」を使ってCPUの動作モードを切り替えることが可能。

 さらにCrusoeでは、消費電力が少ない単純なアーキテクチャを採用する以外にも、消費電力を抑える機能も組み込まれている。それがクロック周波数と動作電圧を変更することで、消費電力を抑える「LongRun」テクノロジだ。Mobile PentiumIIIに組み込まれているSpeedStepテクノロジも、同様に動作クロックと動作電圧を変更することでCPUの消費電力を抑える機能だが、ACアダプタ利用時とバッテリ駆動時という2種類の場合分けしか用意されていないのに対し、CrusoeではCMSがCPUの動作状態を常にモニタしており、負荷の少ないときはクロックと電圧を下げ、パワーが必要なときにはそのつど動作電圧を上げて高いクロックでCPUを動作させる(リアルタイムにクロックを調整する)のである。しかもクロックを生成したり電圧を変更する機能はすべてCPUに内蔵されているので、余計なハードウェアをシステムに追加する必要がないというメリットもある。



PowerPanelのCPU情報画面
PowerPanelのCPU情報を参照すればリアルタイムでCrusoeの動作クロックと動作電圧をモニタできる。またここから、CPUの動作モードも切り替えられる。

 このように、消費電力を抑えることを優先して開発されたCrusoeチップを搭載したC1がどのような進化を遂げたのかを見ていこう。

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン