ここで、「.NET Framework」のメリットと特徴を見てみよう。
一番重要な特徴は、「サービスを構築するために必要となる多様な機能」を提供していることだ。ここではアプリケーションの開発も可能だが、現在はアプリケーションを開発するだけではなく、インターネットを土台としたサービスを、提供し利用するのが主流になりつつあり、「サービス提供のインフラストラクチャ」といった特徴も、この大きな流れを反映したものとなっている。
「.NET Framework」では、アプリケーションやサービスは、配布の際に「動的で容易な配置」が行なえる。ファイルをコピーするイメージで行ない、レジストリへの登録といったシステム登録作業はいっさい不要となる。アンインストールする場合にも、目的のファイルを削除するだけで、機能を削除することができるわけだ。
今考えれば、COM+1.0で作成していた「カタログ」は、実は必要なかったと言えるだろう。オブジェクトごとの属性は、自己記述型になっているので、その各部品の登録の必要はない。オブジェクトの属性を管理するためのバイナリがなくなった。すべて自己記述型で、自分自身が登録情報を持っていおり、それでシステムが動くため、単にXCOPYでコピーすれば、動き始めるのである。またアップロード作業は、Visual Studio.NETのIDEのなかから行なうことができるようになっている(しかし厳密に言うと、全体としてどういうふうに動かすといった属性情報や、ロードバランシングやシステム全体の記述をする場合には、カタログが必要になる)。そして「バージョン管理」機能も持っている。
構築されたアプリケーションや開発されたサービスは、この「.NET Framework」の上で動作する。つまり、機能を提供するとともに「ランタイムの環境も提供」している。ベースとなるCommon Language Runtimeでは、複数の言語を扱うことが可能だ。そして複数の言語から「.NET Framework」で提供されるすべての機能が利用可能となっている。
「.NET Framework」が提供する各機能を支えているのが「メタデータ」だ。メタデータのなかには、クラスやセキュリティなどの内部情報を始めとする、すべての情報が収められている。
つまり、実際に配布される場合には、コードの部分とメタデータが一緒に配布されることになる。メタデータ自体は独立した存在ではなく、PE(ポータブルエグゼキュータブル)ファイル形式のなかの、デバッグ情報「COFF」のなかに収められている情報である。つまり、バイナリファイル(DLL／EXEファイル)のなかの構成の一部として組み込まれているわけだ。だから、配布の際に「動的で容易な配置」が可能で、ファイルをコピーしただけで、すべての情報が移せるというわけである。
もう1つの大きな特徴として、「.NET Framework」は「インターネットスマートデバイス」をサポートしていることが挙げられる。これは大きく2つの意味を持っている。1つは、Thinクライアントに、Webのユーザーインターフェイスの部分をHTMLで転送するようなケースである。このような相手側のThinクライアントに、HTMLのみを提供することが可能だ。もう1つのケースは、スマートデバイスに対して、Common Language Runtimeと「.NET Framework」のサブセットの機能自体を載せてしまうという考え方である。
