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Mobile World Congressに見る次世代通信規格

LTE 対 WiMAX――激化する通信覇権争い

2009年02月20日 14時00分更新

文● 塩田紳二

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フェムトセルは欧米が先行

 もう1つの流行が「フェムトセル」だ。簡単に言うとフェムトセルは、家庭などに設置する小さな基地局だ。現在では、家庭で使うようなものが作られているが、パブリックスペースに設置する機器も規格化されるという。

日本の通信メーカーブースには、フェムトセル機器が展示されていた。これは、NECブースにあったもの。不感地帯の解消方法としてフェムトセルは注目されており、最初は一般家庭向け、次にパブリックスペース向けのものが出てくるのだという

 日本の企業が熱心なのだが、立ち上がりは、規制の緩いEU圏のほうが先になりそうだという。出力が小さいとはいえ、携帯電話の基地局であり、日本では、法的な規制がかなり厳しい。しかし、都市部などどうしても不感地帯ができてしまうのだが、そういう場所に有効な解決策として期待されている。

 携帯電話も安価なものから、高価なものまで様々あり、たとえば受信能力などに違いがある。このため、屋内での通信が困難という場合もある。EU圏ではあまり地下街を見かけないが、石作りなど開口部の小さな建物もある。通常の基地局は、コストがかかり、不感地帯対策としてそうそう簡単に増やせるわけでもない。その解決策としてフェムトセルに期待があるようだ。

 また、有線事業者に起源を持つような携帯電話会社には、ADSLなどの回線との組み合わせによるビジネスが期待できる。基地局の一部でもあり、設置できるのは、通信事業者に限られるからだ。

通信業界を刺激したWiMAX

  多くの通信機器メーカーが、LTEと並べて展示していたのがMobile WiMAX関連の機器だ。WiMAXは、4Gの規格に取り込まれてはいるが、現状は、携帯電話とは別のデータ通信サービス用として使われている。このWiMAXは、コンピュータ由来の技術として、携帯電話業界からは見られている。このため、携帯電話ネットワーク事業者は、LTEという雰囲気があるのだが、機器メーカーは、どうなってもいいように両方に対応という状態だ。

Mobile WiMAXとLTEを同時に展示するのが通信機器メーカの今年の流行か。これは日立ブースの写真。同社は、Nortel社とパートナーを組んでいる

 かつて、IT/コンピュータ業界では、「コンバージェンス」という言い方で、通信とコンピュータの融合が言われた時期があった。しかし、現在の雰囲気は、融合というよりも、静かな衝突といった感じがある。コンピュータネットワーク由来の技術や企業と通信由来の技術や企業などが「モバイルブロードバンド」(あるいはモバイルインターネット)での主役の座を争っているのだ。携帯電話系には、広いサービスエリアというメリットがあり、WiMAXなどのコンピュータネットワーク由来の技術は、高速といったメリットを持つ。

 たとえば、マイクロソフトは、Windows7でようやく高速モバイル通信用のインターフェースをモデムインターフェースから、ネットワークインターフェースに切り替える。モデムインターフェースでは、CPUがデータを1バイト1バイト転送していくために効率が悪い。これに対してネットワークインターフェースでは、パケット単位でデータをまとめてやりとりするために効率がいい。

 このため、無線部分の通信速度が同じであっても、ハードウェアによっては、実際の通信速度に差が出てくる。このネットワークインターフェースへの切り替えは、WiMAXの登場が影響しているのだという。しかし、すでに3G、3.5Gで、高速なワイヤレス通信は利用可能な状態にあった。携帯電話業界からの強い働きかけがなかったのか、マイクロソフトが対応を引き延ばしていたのか、実際のところは分からないが、WiMAXの立ち上がりで、結局携帯電話を使う高速通信の効率が改善されるというのも奇妙な話だ。こんなところにパソコン業界と通信業界のミゾを見るような気がする。

 業界では、早くて2010年ごろからLTEサービスが立ち上がるといわれている。LTEは、携帯ネットワーク事業者が導入を開始すれば、すぐにもサービスを開始できる。これに対してWiMAXは日本でもUQコミュニケーションズが今年7月から商用サービスを始めるが、これからユーザーを集め、インフラを整備していく段階にある。その点では、ほぼ同じスタートと見てもいいだろう。そして2010年ぐらいから、モバイルブロードバンドの主役争いが本格化するのではないかと思われる。

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