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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第51回

アナリストが語る2009年のケータイ事情

2008年12月11日 18時30分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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2008年の業界の通信簿は……

 2008年、業界の構図が変わり始めた時期でもある。

 業界トップのドコモは、MNP後のユーザー流出から脱却しつつあり、ロゴを変えて、これまでの90x、70xの2シリーズから4シリーズ展開へと体制を新たにした。またauは日本のケータイ端末市場と連動するように2008年前半の元気さと後半の勢いのなさが対照的。そしてソフトバンクは1年半以上も純増1位とiPhoneを獲得している。またイー・モバイルはデータ専業から音声を導入し、Touch Diamond等のスマートフォンも好調だ。

 そんな環境について、1キャリアずつ、木村氏に聞いてみた。

NTTドコモ

新シリーズを投入したことはNTTドコモにとって非常に大きなチャレンジ。冬ケータイには22機種を投入し、主要キャリアの中で一番多かった

 新たに「STLYE」「SMART」「PRIME」「PRO」の4シリーズを起爆剤にする、とのことですが、ブランドが生きる部分と殺す部分があると思います。90xシリーズは国内トップレベルのケータイが揃うブランドとして完全に浸透していました。このブランドを今回崩した点で相当の意気込みが感じられますが、と同時にリスクもあります。もう少しユーザーのことを考えて、シンプルなブランディングにするほうがよかったのではないでしょうか。70xシリーズを中心とした在庫コントロールの問題でブランドを変えたように映り、顧客満足度の点にしわ寄せが残りそうです。ただ、各シリーズでいい端末が含まれているのは事実です。

au

ミス・ユニバース・ジャパン

秋・冬端末の発表会に登場したミス・ユニバース・ジャパンの3名。華やかな会見となった

 auの勝ちパターンは、いい端末を安く投入してリーズナブル、それに面白いサービスがついてくる、というもの。懐の深いキャリアでしたが、かつての勢いは感じられません。2008年のクリスマス商戦向けに7機種というのは、少なくせざるを得ない状況を感じさせます。従来の成功パターンから抜け切れず、新しい端末やサービスにトライしたり、打ち出せているようには見えません。他のキャリアもサービスに力を入れていて、差がなくなってくると旗色が悪くなっています。

ソフトバンクモバイル

1台1298万円の「SoftBank 823SH Tiffanyモデル」をプレゼントしたソフトバンクモバイル孫社長。何かと注目される1年だった

 CMはいいのですが、難しいフェイズにあると思います。ソフトバンクの分岐点はiPhone導入前後に2つあったように思います。まず、1つ目が2008年の春頃に実施した「学割ホワイト」。これは、若い人に安い金額を3年間提示して入ってきてください、という施策でしたが、あまり高い評価を得られませんでした。最もネガティブに捉えられたのが「繋がらない」という点。パソコンを使わない学生にとって、日常生活や就職活動で非常に重要な情報手段がケータイです。学生にとって繋がらなければノーと言われるため、ネットワーク改善の要望が課題として浮き上がってきたのは事実です。そして7月にもう1つの分岐点であるiPhoneが販売されましたが、販売状況から判断すれば幅広いユーザー数に訴求できたわけではないようです。先ほどのインフラネットワークに関する問題が、ここでも関わっているように思います。

イー・モバイル

イー・モバイルの新製品は上りが高速なHSUPA端末も登場させており、注目を集めている

 予想以上に伸びていると思いますが、販売奨励金に近いやり方で店頭販売が行なわれていて、評価しにくい。ただ、次のフェイズでやるべきこと、つまりインフラの拡充と新サービスの提供を着実にやり続けていくことでしょう。ユーザー増加に合わせてネットワークの拡充やサポート体制などの宿題は結構大きくなっていくので、これをクリアできるかどうか。

ウィルコム

ウィルコムのHONEY BEEは量販店の売上上位に入るなど好調。しかし、PHS市場は苦戦を強いられている

 2007年に比べると勢いはなくなってきているように思います。低料金サービスがウィルコムの特徴でしたが、ソフトバンクの戦略などとオーバーラップする部分があり、しっかりとした存在感を示すことができなかった。ウィルコムは高速の次世代PHSがあるので、そこに期待している部分はあります。しかし、既存のいまの製品価値を維持した上で、高速サービスにうまくシフトできるかどうかが課題でしょう。

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