2008年の業界の通信簿は……
2008年、業界の構図が変わり始めた時期でもある。
業界トップのドコモは、MNP後のユーザー流出から脱却しつつあり、ロゴを変えて、これまでの90x、70xの2シリーズから4シリーズ展開へと体制を新たにした。またauは日本のケータイ端末市場と連動するように2008年前半の元気さと後半の勢いのなさが対照的。そしてソフトバンクは1年半以上も純増1位とiPhoneを獲得している。またイー・モバイルはデータ専業から音声を導入し、Touch Diamond等のスマートフォンも好調だ。
そんな環境について、1キャリアずつ、木村氏に聞いてみた。
NTTドコモ
新たに「STLYE」「SMART」「PRIME」「PRO」の4シリーズを起爆剤にする、とのことですが、ブランドが生きる部分と殺す部分があると思います。90xシリーズは国内トップレベルのケータイが揃うブランドとして完全に浸透していました。このブランドを今回崩した点で相当の意気込みが感じられますが、と同時にリスクもあります。もう少しユーザーのことを考えて、シンプルなブランディングにするほうがよかったのではないでしょうか。70xシリーズを中心とした在庫コントロールの問題でブランドを変えたように映り、顧客満足度の点にしわ寄せが残りそうです。ただ、各シリーズでいい端末が含まれているのは事実です。
au
auの勝ちパターンは、いい端末を安く投入してリーズナブル、それに面白いサービスがついてくる、というもの。懐の深いキャリアでしたが、かつての勢いは感じられません。2008年のクリスマス商戦向けに7機種というのは、少なくせざるを得ない状況を感じさせます。従来の成功パターンから抜け切れず、新しい端末やサービスにトライしたり、打ち出せているようには見えません。他のキャリアもサービスに力を入れていて、差がなくなってくると旗色が悪くなっています。
ソフトバンクモバイル
CMはいいのですが、難しいフェイズにあると思います。ソフトバンクの分岐点はiPhone導入前後に2つあったように思います。まず、1つ目が2008年の春頃に実施した「学割ホワイト」。これは、若い人に安い金額を3年間提示して入ってきてください、という施策でしたが、あまり高い評価を得られませんでした。最もネガティブに捉えられたのが「繋がらない」という点。パソコンを使わない学生にとって、日常生活や就職活動で非常に重要な情報手段がケータイです。学生にとって繋がらなければノーと言われるため、ネットワーク改善の要望が課題として浮き上がってきたのは事実です。そして7月にもう1つの分岐点であるiPhoneが販売されましたが、販売状況から判断すれば幅広いユーザー数に訴求できたわけではないようです。先ほどのインフラネットワークに関する問題が、ここでも関わっているように思います。
イー・モバイル
予想以上に伸びていると思いますが、販売奨励金に近いやり方で店頭販売が行なわれていて、評価しにくい。ただ、次のフェイズでやるべきこと、つまりインフラの拡充と新サービスの提供を着実にやり続けていくことでしょう。ユーザー増加に合わせてネットワークの拡充やサポート体制などの宿題は結構大きくなっていくので、これをクリアできるかどうか。
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