世界経済は2008年は9月のリーマンショックに端を発した金融危機以来、急速に縮小、もしくは再編成を余儀なくされている。日本経済は直接的な影響は少ないとされてきたが、それまでの原油高による影響は原油価格が下がってもすぐには消えず、世界経済の減速のあおりを受けて自動車や電気産業の生産縮小が始まった。生活費高から雇用不安へ引き継いで年を越すことになりそうだ。
そんな環境において、2009年のケータイ市場の予測はどのようになるのだろうか。IDC Japanのシニアアナリスト木村融人氏にお話を伺いながら考えていきたい。
上半期と下半期で全く別の表情を見せる販売状況
2007年は5100万台を超える出荷台数を誇った日本のケータイ端末市場だったが、2008年は4300万台程度に止まってしまうことになりそうだ。年初は市場の飽和等の要因もあり、前年比で2割減との予測が出ていたが、その予測をも割り込んでくるほどだった。木村氏は2008年のケータイ市場をこう振り返る。
「2008年1月~6月と、7月~12月では全く別の顔でした。特に後半の販売の失速は非常に響いてきている。その失速が2009年に繋がる『変なバトンタッチ』になってしまいそうです。問題点は販売制度の変更にあります。販売奨励金の存在が白か黒かという議論の過程で、現在の割賦や分割払いの方式を取ることになった経緯があります。その結果、現在のケータイ端末の出荷不振を引き起こしていると見ています」(木村氏)
総務省やモバイルビジネス研究会は違う、と指摘しているが、実際問題として、我々利用者のレベルでは端末の買い換えサイクルが下がっている。販売制度が変わった点で、一定期間(多くが2年間)使わなければ割賦で支払ってきた端末代金や契約解除料を一括で請求される仕組みによって、新しい端末が欲しくても一定期間が終わるまでは端末を買い換えられない、いわゆる「縛り」の下に入っていることになる。
「例えば、ユーザーがご家族の誰かにケータイをプレゼントしようとしたときに、家族割りに入って家族間の通話が無料になれば喜ばれます。しかし契約で端末の割賦が入っていると、毎月の端末代金という『負債』までプレゼントすることになってしまい、気軽にはケータイを贈れません。0円や1円ケータイを規制するのは正しかったですが、ケータイの買い方に価格の自由度が制限された点が問題です」(木村氏)
日本のケータイ端末に魅力がなかったか、と言われればそんなことはない。iPhoneなどのスマートフォン以前からモバイルウェブに接続して情報が得られ、電子メールが扱える日本のケータイは、GPSや高画素・高画質のカメラ、ゲーム、おサイフケータイなど、様々な機能を搭載し、近年はデザインやファッションとのコラボレーションにもこだわりを見せている。その様子は、本連載でも紹介してきたとおりだ。
しかし、「いいものがあっても、値段が高過ぎると売れない」(木村氏)という指摘通り、販売奨励金が撤廃される以前は標準機能の機種で1万円以下、高機能機種でも3万円以下で手に入れられたが、現在はそれぞれ3万円程度、6万円~10万円と、ユーザーがトータルで支払う金額が大きく変わってしまった。割賦制度や割引等も利用できるが、この金額が見えてしまった点で、ユーザーの端末に対する消費の冷え込みを招いてしまったと言えそうだ。
契約上の縛りと割高感を感じる高い価格、2つの要素がユーザーの自由な端末選びを制限してしまっている。そんな現状が見えてきた。では、どうしたらよいのだろうか?
「ケータイは老若男女が使っていて、その使い方も様々です。そんな彼らに1~2つの販売方式で対応すること自体に無理があります。スイミングプールのコースのように、6~7コースを用意して、端末の販売制度にフレキシビリティを持たせるべきではないでしょうか。例えばキャリアのサービスを積極的に利用して利用料金が高いユーザーに端末販売のインセンティブを与えるのは自然なことです」(木村氏)
つまり、クレジットカードや飛行機のマイレージカードの会員資格のように、使い方にフィットするサービスやインセンティブを用意し、ヘビーユーザーには最新機種をどんどん使ってもらうような施策をとってもいいのではないか。販売の仕方自体にもフレキシビリティが必要だし、ユーザーの反応を見て対応するアクションが必要なのである。
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