非常に凝っていた「アップルガイド」
そうこうするうちに、ヘルプが不要なことが美徳であるという考えも薄れ、徐々に凝ったヘルプ機能が搭載されるようになった。画面上に配置されているツールやボタンなど、それが何をするものかを表示する「バルーンヘルプ」もそのひとつ。現在は「ツールチップ」などと呼ばれ、広く利用されているヘルプ機能の元祖と言える。
また、そのころからパソコンの開発サイクルが短くなり、コストダウンも叫ばれるようになると、分厚い紙のマニュアルを制作して付属させていたのでは、時間とコストがかかりすぎると判断されるようになる。そして紙のマニュアルを不要にするようなオンラインマニュアルの必要性が高まった。
そこでアップルは、「アップルガイド」という非常に凝ったオンラインマニュアル機能をMacに装備した。
これは現在の技術水準から見てもよくできたものだったが、凝った機能だけにコンテンツを作るのに多大な労力を必要とし、あまり利用されることなく廃れていった。その中には、複雑な操作を単純なステップに分解して、順にユーザーをガイドするという優れた機能もあった。
同様の機能は、Macで言えば「アシスタント」、Windowsでは「ウィザード」と呼ばれて現在にも残っている。こうしてGUIのヘルプ機能は紆余曲折を経て、かなり現実的で実用的な線に落ち着いたと言えるだろう。
筆者紹介─柴田文彦
MacPeopleをはじめとする各種コンピューター誌に、テクノロジーやプログラミング、ユーザビリティー関連の記事を寄稿するフリーライター。大手事務機器メーカーでの研究・開発職を経て1999年に独立。「Mac OS進化の系譜」(アスキー刊)、「レボリューション・イン・ザ・バレー」(オライリー・ジャパン刊)など著書・訳書も多い。また録音エンジニアとしても活動しており、バッハカンタータCDの制作にも携わっている。
この連載の記事
-
最終回
iPhone/Mac
ユーザーの優柔不断につきあう「ゴミ箱」 -
第13回
iPhone/Mac
右クリックメニュー、その歴史と効果 -
第13回
iPhone/Mac
MacとWindows、「検索」の進化を振り返る -
第12回
iPhone/Mac
Mac・Winで比べる、ソフトの切り替え方法 -
第10回
iPhone/Mac
発展し続ける「ウィジェット」 -
第9回
iPhone/Mac
スクリーンセーバーの存在意義 -
第8回
iPhone/Mac
「マルチユーザー」サポート -
第7回
iPhone/Mac
日本語入力の生い立ち -
第6回
iPhone/Mac
クリップボードという大発明 -
第5回
iPhone/Mac
ファイル表示のあれこれ - この連載の一覧へ