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パナソニックの社名変更を支える「衆知を集めた全員経営」とは
2008年10月29日 04時00分更新
10月28日、東京・御成門のパナソニック1号館で行われた2008年度上期連結業績発表の席上、パナソニックの大坪文雄社長は、「1日の社名変更以降、衆知を集める全員経営が実践されている」と切り出した。
「社名変更以降、この1か月で、目に付く変化とはなにか」との会見での筆者の質問に、大坪社長が回答したものである。
続けて大坪社長は、「パナソニックグループに一体感が出てきた。これまではドメインをまたがる商品を開発する場合、関係者を集めるというところからスタートしていたが、いまでは、ドメインの責任者同士の呼びかけがなくても、自らがお互いに働きかけをし、相談をはじめている。ドメインを超え、BUを超えた取り組みが、自主性を持った形で動きはじめている」とする。
さらに、「経済環境の厳しさはあるが、それには負けていない現場の雰囲気がある。苦しいなかでも、知恵を使える余地は多分にある。原価低減活動であるイタコナ、工場現場におけるセル生産方式、在庫削減活動、コストバスターズ活動など、社員ひとりひとりが、自分のできることを明確にし、それに対して努力してくれている」として、全員経営の考え方が浸透し、促進されていることを示す。
パナソニックへの社名変更に伴い、大坪文雄社長は、改めて、「衆知を集めた全員経営」という言葉を、社内に示している。
これは、創業者である松下幸之助氏が、1972年に語った言葉である。
9月16日に行われたパナソニックブランドによる白物家電新製品の発表会見の席上でも、大坪社長は、「衆知を集めた全員経営」の言葉を、スクリーンに大きく映し出して、読み上げてみせた。
「みんなが経営に興味をもって、お互いに知恵を出し合って、それをうまく結集して、経営の芯としている、というような会社は、概して発展している。それが特にうまくいっている会社は、急速に発展している」
大坪社長は、それを読み上げたあと、「社名変更、ブランド統一を機に、創業者のこの言葉を実践し、世界中にいるパナソニックグループの全社員で共有したいと考えている」と語った。
そして、「私が入社以来、創業者の言葉として胸に残っているのが、この衆知を集めた全員経営である。会社での経験が長くなればなるほど、意味がある言葉だと思うようになった」とも語る。
この姿勢は、社名変更当日となる10月1日に行われた総合朝会の挨拶のなかにも含まれていた。
「社名変更・ブランド統一の最大の狙いは、全従業員の知恵・心・思い・パワーを結集すること。全世界の社員の一秒の努力、一滴の汗も無駄にせず結集したい。様々な国籍、様々な事業に携わる、多様な能力を持ったパナソニックグループの全従業員が、ひとつの名前のもとに結集することで大きな力を出せると確信している」と大坪社長は語ったが、ここで示したのは、まさに、「衆知を集めた全員経営」である。
大坪社長は、社名変更、ブランド変更は、衆知を集めた経営の実践によって成功につなげることができると考えている。
パナソニックというひとつのブランドのもとに、すべてのリソースを結集するのは、まさに衆知を集めた全員経営そのものだ。
次ページ「創業者の経営理念以外、聖域はない」に続く
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