ASCII.jpヘッドホン研究所 第9回
ASCII.jpヘッドホン研究所
音切れを低減した高音質サラウンドヘッドホン――パイオニア「SE-DRS3000C」
2008年05月15日 13時00分更新
Audio Check!
サラウンドシステムということで、本機をBDレコーダー「BDZ-X90」と光デジタルケーブルで接続して再生試聴した。試聴ソースにはBD映画「イノセンス」(DTS-ES収録トラック)、音楽CD「Lush Life」(Jacintha)を使った。
まずはイノセンス。サラウンド感は良好だ。例えば事件現場を取り囲む野次馬の声だが、ドルビーサラウンドがオフだと、左右の耳に張り付くように再生されて少し聞き苦しくさえある。それがドルビーヘッドホンをオンにすると、両耳から少し離れて頭を取り囲むような感覚となり、空間に広がりが出る。サラウンド再生を名乗るのに不足はない。解像感も高く、テレビの内蔵スピーカーでは聞き取れないであろう、さまざまな音が頭の周囲に無数に配置される。
ドルビーヘッドホンモードの設定は、イノセンスに関してはDH2が適当と感じた。DH1だと映画的な響きや空間の広さが抑えられてしまい、DH3では台詞が響きすぎて不自然だ。DH2は響き具合と台詞の自然さのバランスがよい。
場面の雰囲気を支配する不気味な通奏低音は少し軽いかと感じたが、トランスミッター前面にある「BASS ASSIST」という低音域強調機能を試してみたところ、かなり改善された。BASS ASSISTも場面や作品に応じて使いわけるとよいだろう。
音楽CDを特に処理せずステレオのままで聴くと、本機のヘッドホンとしての基本的な素性のよさがわかる。密閉型ではなくオープン型ハウジングを採用していることが大きいのだろうか、響き方が自然で、ヘッドホンにありがちな空間の狭さをあまり感じさせない。
シンバルは鮮烈なシャープネスにはやや欠ける少し優しげな音だが、余韻の滑らかな減衰が心地よい。低域もやたらとブーストするようなことはなく(BASS ASSISTスイッチを使えばそれも可能だが)、ウッドベースは自然な量感と明瞭なアタック感を持つ。ボーカルも、肉感たっぷりというよりはややさらりとした質感で描き出してくれる。パイオニア製品らしいすっきりとした、しかし骨格のしっかりとした音像・音場と感じる。
総合評価
サラウンドヘッドホンの中でも音質面での評価が高かった製品の後継モデルということで期待して試聴したが、十分期待に応えてくれた。本格サラウンドシステムを組む予算や設置スペースはないけれど、できるだけ高音質でサラウンドを楽しみたい。そんなユーザーには選択肢としておすすめしたい製品である。
SE-DRS3000C 製品情報 | |
---|---|
製品名 | SE-DRS3000C |
ドライバー | 直径50mm |
再生周波数帯域 | 10Hz~24kHz |
対応音声形式 | ドルビーデジタル、ドルビープロロジックII、DTS(DTS-ES含む)、MPEG-2 AAC、PCM |
伝送方式 | 非圧縮2.4GHzデジタル無線伝送 |
入力コネクター | 光デジタル角型×2、同軸デジタル×1、アナログ(ステレオRCAピンジャック)×1 |
質量 | ヘッドホン本体 約350g、トランスミッター部 約720g |
バッテリー駆動時間 | 約7時間 |
付属品 | ACアダプター、光デジタルケーブル、リチウムイオン充電池 |
価格 | オープンプライス(予想実売価格 4万円前後) |
発売時期 | 発売中 |
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