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ASCII.jpヘッドホン研究所第4回

パッドとノズルで好みの音にカスタマイズ パイオニア「SE-CLX9」

2008年02月07日 10時56分更新

文● 高橋 敦

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 明瞭な再生音を特徴とする“バランスドアーマチュア方式ユニット”の採用は、本連載が対象とする1~3万円クラスの価格帯ではもはや多数派で、単に採用しただけでは注目を集められない。そこに新たな提案を盛り込んできたのが、東北パイオニア(株)の「SE-CLX9」だ。

東北パイオニア「SE-CLX9」
好みに合わせて多彩なカスタマイズができる、東北パイオニア「SE-CLX9」

 そのコンセプトを一言で表すなら「買ってから付け心地や音を選べるイヤホン」である。イヤホンを構成するパーツのいくつかを交換可能として、装着感や音質をユーザーに合わせて調整できるようにしたのだ。自分好みの音を手に入れるためには、多少の手間は惜しまないというマニアには気になる製品だろう。

製品パッケージの中身 製品パッケージの中身。整然とパッキングされた本体と多くの交換パーツが、チューニング意欲を高めてくれる

Point 1 三次元形状フィッティング


 イヤホンハウジングの耳に接する部分は、耳にぴったりとフィットする独自の形状を採用する。しかもその部分は、「イヤーホルダー」という独立したパーツになっており、ハウジング本体から取り外せるようになっている。耳の穴に挿入するイヤホンチップも一般的な製品同様に取り外し交換可能だ。

 イヤーホルダーとイヤホンチップはそれぞれ4サイズが付属。ホルダーのサイズで装着の感触や安定性を、チップのサイズで密閉度(遮音性と音質に関わる)をと、細かく調整できるのがSE-CLX9の「三次元形状フィッティング」というわけだ。交換は軟質シリコン製の各パーツを引っ張って外して、ぐにぐにと押し込むだけでよいので、手間はかからない。

 そのほかの使い勝手の面では、コードの長さ(約0.8m)もちょうどいい。プレーヤー本体を上着やジーズンのポケットに入れて持ち歩くのにほどよい長さだ。

各パーツを外した状態 各パーツを外した状態。左から本体、ノズルホルダーリング、ノズル、イヤーホルダー、イヤホンチップである。ノズルからイヤホンチップまでが交換可能なパーツだ
試着状態 試着状態。面倒かもしれないが、チップとホルダーをあれこれ入れ替えていけば、ワンランク上のフィット感を見つけられるだろう

Point 2 サウンドチューニング


 音域を左右するノズルは、以下の5種類が付属する。

  • Standard 標準となるノズル。色は白
  • High Tune1 高域が強調される。水
  • High Tune2 高域がより強調される。青
  • Bass Tune1 高域を抑えて、低域が強調される。灰
  • Bass Tune2 高域をより抑えて、低域がより強調される。黒
交換パーツの全容 交換パーツの全容。上段5つがノズル、中段4つがチップ、下段4つがホルダー

 出荷時にセットされている白色の「Standard」を中心に、高域重視側、低域重視側でそれぞれに各2段階の調整が可能となっている。実際の音の変化については試聴しながら確認していこう。

 ちなみに、ノズルは小指の先よりも小さいパーツで、それをまた小指の先ほどのねじ込みリングで固定するため、交換作業は少しやりにくい。

本体と同梱する付属品 本体(右)と同梱する付属品(交換パーツ除く)。左からキャリング・ポーチ、クリーニングブラシ、0.7m延長コード、本体

Audio Check!


 連載で常用している再生環境(第3世代iPod nanoもしくはAirMac Express+DAC/ヘッドフォンアンプ izo iHA-1A)で、Appleロスレス形式の音楽ファイルを試聴した。

 イヤーホルダーとイヤホンチップのフィッティングによっても音質は変化するが、これは(筆者の耳に)最適と思われる組み合わせ(チップは最大の、ホルダーは2番目に大きいものを使用)で固定。SE-CLX9のポイントであるイヤーノズルのみを随時交換して、その効果をチェックした。

 ジャズの女性ボーカル、Jacinthaのアルバム「Lush Life」。Standardノズルでは、ウッドベースの存在感が薄いことは否めない。フレーズが低域に行ったときの沈み方が弱いので、リズムがそこでドンと決まってくれない。

 そこでノズルを「Bass Tune2」に変えてみると、ベースは改善されるが今度はシンバルが曇る。Bass Tune型は高域を抑えることで相対的に低域を強調する働きとのことなので、こうなってしまうのだろう。

 結局この曲には「Bass Tunes1」が一番合うようだった。ベースの深みやボーカルの肉感を増しつつ、シンバルのさらさらとした響きも確保できる。

 シンバルの粒子感は細かく、金属的ではあるが耳に痛い音色にはなっていない。声の輪郭のふわりとしたソフトフォーカス感も再現している。スネアドラムのスナッピーの響き(金属共鳴)もしっかり伝えてくる。ウッドベースは期待していたほど重く深くは沈まないが、輪郭は明瞭だ。

 次に視聴した、ギターのキレやボーカルの伸びやかさなど高域の再現性を重視したいFAKiEのアルバム「To The Limit」は、Standardに落ち着いた。Bass Tune型だと音場の爽やかさが失われ、High Tune型ではさすがに軽すぎる。

 JUDY AND MARYのアルバム「WARP」は、ギターのガチャガチャした音色と演奏のエッジが立っていて心地よく聞こえる。解像度も高く、背景に薄く重ねられているサウンドエフェクトも効果的だ。全体のクリアネスでStandardにするか、低域を重視してBass Tuneにするかは悩ましいところだ。

 SE-CLX9は、基本的にバランスドアーマチュア方式らしい明瞭な音像と解像感の高い音場を持つ。それを土台として、音域バランスを好みで調整できるというのはやはり魅力的だ。


総合評価


 この価格帯のヘッドホン・イヤホンは安くない買い物だけに、購入後に聴き込んでみて「もうすこし低音が出ればなあ……」などと感じてしまうとがっかりだ。しかし、そんなときSE-CLX9であれば、「じゃあノズルを交換してみよう」という具合に対応できる。高級ヘッドホンに慣れていないユーザーにとっての、購入時の精神的ハードルは、この製品なら少し下がるかもしれない。

 もちろん、もっと積極的に自分にフィットした音を作り込むこともできるので、マニアックに楽しみたい方にもおすすめできる。

SE-CLX9 製品情報
製品名 SE-CLX9
ドライバー バランスドアーマチュア型×2
出力音 105dB
再生周波数帯域 20Hz~20kHz
インピーダンス 32Ω
入力コネクター 3.5mmステレオミニプラグ(金メッキ)
ケーブル長 約0.8m
質量 約8g(ケーブル除く)
付属品 0.7m延長コード、イヤーホルダー4サイズ、イヤホンチップ4サイズ、ノズル5種類、クリーニングブラシ、キャリング・ポーチ、アルミ製収納ケース
価格 2万2000円

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