イヤホンやヘッドホンの筐体には、金属から木材までさまざまな素材が使われてきた。筐体の素材は音質を左右する重要ポイントであり、工夫の余地がある部分である。
それにしても「そろそろ新素材も打ち止めだろうか」と思っていたところに登場したのが、今回紹介するパナソニックの「RP-HJE900」である。その筐体素材はなんとジルコニアなのだ。
Point 1 筐体はジルコニア製
RP-HJE900では、ハウジングとスピーカープレートの素材にジルコニア(二酸化ジルコニウム、ZrO2)を使っている。模造ダイヤと呼ぶ方がイメージしやすいかもしれない。ダイヤモンドと同程度の高い屈折率と、ダイヤモンド砥石でしか磨けないほどの高い硬度を持つ素材だ。
磨き上げたジルコニアを採用することで、本機の筐体は「宝石のようにキラキラ」と言うほどではないが、気品のある輝きを手に入れている。しかも何しろダイヤに近い高度であるから、傷つきにくさは言うまでもない。
もちろん、ジルコニアの採用は外観の美しさや傷付きにくさのためだけにではない。音質へのメリットがあってのことだ。
ジルコニアは、一般的なイヤホン筐体に用いられるアルミニウムや樹脂と比較して、共振レベルが低く、共振する音域が耳に聴こえる音域の限界に近い。つまり、共振が起きる音域を人間の耳の可聴範囲外に追いやることで、音質を向上させることができるのだ。
Point 2 使いやすさへの配慮も
高価格帯のイヤホンの中には、音質重視のあまり使い勝手を見落としている製品も残念ながらある。しかし本機にその心配はない。
まずイヤーピース。素材自体は国内製品ではごく一般的に採用されているソフトシリコン製で、形状もごく普通だ。しかし、S・M・Lに加えて、XSサイズの合計4サイズが付属している。耳の穴が小さめの人へのフィット感に配慮している。
より細かなところでは、左右のコードを絡みにくくする「からみ防止スライダー」が用意されている点を挙げたい。地味な装備だが、カバンの中に収納しておくときなど、日常的に役立つ。
筐体につながるコードは、根元からの着脱式になっている。万が一の断線を考慮しての機構だ。安くはない製品だけにありがたい工夫であり、日常的に使う際にも安心感を持てる。コードの長さ、プラグがコンパクトなストレート型である点も、iPodなど携帯型オーディオプレーヤー本体に直接接続する際にちょうどよい。
この連載の記事
-
第11回
AV
対決!ノイズキャンセリングイヤホン 4製品 -
第10回
AV
カナル型の手軽さでノイズキャンセルを楽しむ――オーディオテクニカ「ATH-ANC3」 -
第9回
AV
音切れを低減した高音質サラウンドヘッドホン――パイオニア「SE-DRS3000C」 -
第8回
AV
「騒音99%カット」の実力は?――ソニー「MDR-NC500D」 -
第7回
AV
迫力のサラウンドを気軽に楽しむ ソニー「MDR-DS7000」 -
第6回
AV
ロックを疾走させるイヤホン ブイ・モーダ「v-moda vibe v2」 -
第5回
AV
木製振動板ならではの濃密な音色 日本ビクター「HP-FX500」 -
第4回
AV
パッドとノズルで好みの音にカスタマイズ パイオニア「SE-CLX9」 -
第3回
AV
ノイズキャンセルと音質補完技術 クリエイティブ「Aurvana X-Fi」 -
第2回
AV
デュアルドライバーのカナル型ヘッドホン オーディオテクニカ「ATH-CK10」 - この連載の一覧へ