「パソコンは専用オーディオに劣る」 そんな常識は、今後も常識のままであり続けるのだろうか?
iPod全盛の昨今、パソコンで音楽を聴く行為はごく一般的になった。だが、いい音で音楽を聴くことは難しい。そんな中、注目を集めているのが、オンキヨーのHDオーディオコンピュータ「APX-2」だ。単品オーディオやCDレシーバーの開発で培ったノウハウをパソコンに応用。 コンパクトで静粛性が高く、大型のスピーカーでも余裕を持ってドライブできる駆動力を持つというのが売りだ。
今回はその音質をハイエンド機器を扱うオーディオ店で検証した。果たしてパソコンは専用オーディオにどこまで迫れるのだろうか?
筐体のズシンとした重さにオーディオらしさ
まずは、APX-2の大まかなスペックを見てみよう。
OSにはWindows Vista Home Premiumを採用。500GBのハードディスクと2GBのメモリーを搭載する。CPUには、省電力なノート用CPUであるCore 2 Duo T5500(1.66GHz)を採用している。
従来のパソコンとの大きな違いは、本体にバナナプラグ対応のスピーカー端子を備え、直接スピーカーケーブルを接続できる点だ。デジタルアンプの基板や電源はパソコンのマザーボードと完全に分けられている。
パソコン上で再生した音は、Mini PCI接続のサウンドカードからデジタル信号としてアンプ部分に出力され、ここでD/A変換される仕組みだ。増幅部分にはPWM(Pulse Width Modulation)方式のD級アンプを採用。効率が高く、省スペースでも高い出力が得られる点が特徴である。APX-2は幅205×奥行き388×高さ155mmと比較的コンパクトな筐体だが、最大100W×2chの出力を実現している。
筐体には、徹底した防振処理が施されており、静音パソコンとしても優れた製品に仕上がっている。フローティング構造を採用したHDDユニットや1.6mmの肉厚シャーシを採用するなど、細部までかなりこだわったつくりだ。起動中のAPX-2に耳を近付けてみたが、わずかにファンの音が聞こえる程度で、ノートパソコン並みに静か(騒音レベルは22dB)だった。
アンプ用に大型のトランスを2基搭載することもあり、本体はずっしりと重い10.7kg。この点でも高級オーディオを志向している印象だ。ネジの締め方にまでこだわっているとのことで、ユーザーが筐体の内部にアクセスすることは推奨されていない。このため、メモリー交換などもサポート対象外となる点は注意したい。