駆動力が求められるトールボーイ型SPなどで視聴
肝心の音はどうだろうか? プロフェッショナルの意見も聞きたいと思い、今回はオーディオショップに持ち込んで試聴してみた。
お相手をしてくださったのは東京都町田市のオーディオ店PLUTON(プルートン)の店長・鈴木孝夫さんだ。PLUTONは併設されたKRYNAの名前で真空管アンプやスピーカーの開発もしており、オーディオマニアなら知る人ぞ知る老舗である。
筆者はPLUTONのことを約20年前から知っており、当時はサウンドミネの社名でパソコンも扱っていた。以前より鈴木さんが「CDの次はパソコンで音楽を聴くようになるのでは」と言っていたことから、APX-2のような製品にも興味があると思い、協力をお願いした。
試聴は3種類のスピーカーで行なった。「KRYNA D702」(2ウェイフロア型、157万5000円)、「ALR JORDAN Entry Si」(2ウェイブックシェルフ型、5万8000円)、「エソテリック MG-10」(2ウェイブックシェルフ型、21万円)の3つ。特にD702はデンマークのDYNAUDIO製ユニットを搭載した、83dB/Wmと能率が低いスピーカーであり、APX-2の駆動力を試すのに最適ということで使用した。
検証に使用した音源
鬼太鼓座「響天動地」よりM1『太陽の馬』
オーディオ専門誌でもたびたび検証用に使われる高音質録音盤。太鼓の低音とスケール感ある響きをチェックするのに使われることが多い。
サラ・ブライトマン「もしも私がふたたび恋に落ちたら」よりM4『私を想って』
人気ボーカリストのアンコール集。オペラ的ボーカルの高音と、オーケストラのダイナミクスある響きをチェック。
綾戸智絵「Life」よりM14『レット・イット・ビー』
e-onkyo musicで配信している24ビット96kHz音源を使用。ピアノ弾き語りのジャズシンガーが、コーラスと合わせて歌う際の音をチェック。
タイトな表現のスピーカーとの相性がいい
3機種を用いて試聴をした結果、鈴木さんが出した結論は「APX-2は割とスピーカーを選ぶ製品かも知れませんね」ということだった。
試聴したスピーカー3機種のうち、苦戦したのはD702。鈴木さんによるときっちり鳴らせば3次元的な定位を再現できる自然な音色のスピーカーとのこと。しかし、低域も高域も足りず、広がりのない音になってしまった。また、高域の再生音に歪みが感じられたが、これはアンプがきっちりスピーカーを鳴らし切れていない時に起こる現象だという。
一方、Entry SiやMG-10との相性は良かった。特にMG-10は良く、D702で聞こえた歪みもなく、全体的にバランスの良い音が聞けた。ただし、APX-2と組み合わせると、「ボーカルやコーラスなど、人の声が若干きつくなる傾向があるようだ」と鈴木さんは言う。「APX-2に向いているのはタイトな音を出すスピーカーで、音場を広く再現するようなスピーカーとの相性はそれほどよくないのではないか」というのが鈴木さんの感想だ。
筆者も一緒に試聴していたが、確かにスピーカーによって向き不向きがあるように感じた。APX-2と合わせてスピーカーを購入する際は、可能ならばあらかじめ試聴することが望ましいだろう。なお筆者は、今回のテストとは別にオンキヨーの「D-312E」(18万9000円)と組み合わせた音を聴いている。こちらは満足いく音質だったので検討に値すると思う。
全体的な感想として鈴木さんは、「あまり成功例のないデジタルアンプを採用しながら、うまく音がまとまっていて、オンキヨーさんはよくやっていると思いました」と話したが、同時に「1台何十万円もするようなハイエンド機と比べるのはちょっと酷かな……」とも言う。
もちろんオーディオの専用機にはこれまで長年蓄積してきた開発ノウハウがつぎ込まれている。そういう意味では、オンキヨーのオーディオコンピュータは、まだ第2世代になったばかりだ。「今後もっと良くなることを期待したい」と鈴木さんは言う。