パソコンでの高音質再生という分野の拡大に期待
以上、APX-2について一通り見てきたが、筆者が思ったのは、APX-2は、実はとてもコンセプト的な製品ではないかということだ。
そもそもパソコンで高音質再生をするなら、USB接続できるアンプやD/Aコンバーター、パワードスピーカーを用意するという方法もある。実際、前機種のAPX-1はアンプ部分とパソコンが別筐体となった製品だった。また、単に音を再生すると言うだけならば、Windowsにこだわる必要はないだろう。例えば、Linuxを搭載したNASのような製品も考えられる。そこをあえてデジタルアンプと一体化したWindowsパソコンにしたところに、この製品のねらいが見えてくるように思う。
最近では、一人暮らしの若者を中心に、テレビを買う代わりにテレビが見られるパソコンを買う人が増えていると聞く。パソコンならばDVDの再生が行なえ、インターネット上の動画コンテンツも見られる。さらに別々の機器を買うよりも省スペースだ。
APX-2に興味を持つのは、DVDもインターネットも見られて音楽もいい音で聴きたい、そんなユーザー層ではないだろうか。だからこそ、OSはフル機能のWindowsであり、デジタルアンプ内蔵なのではないかと思うのだ。パソコンは持っているけれど今までオーディオ機器になじみがなかった、APX-2はそんな層にアピールできる製品である。
PLUTONの鈴木さんは「最近は若い世代でオーディオに興味を持つ人が減っている」と嘆く。音楽を聴く場面が多様化する中、自宅のステレオだけが、音楽鑑賞に最適な環境ではなくなっていることの表れなのだろう。
これは若い世代のユーザーが自宅で使いたくなるようなオーディオ製品が開発できていないということなのかもしれない。そんな中登場したAPX-2には、新しいオーディオ機器の可能性を切り開いていく可能性がある。こだわりを持って細かいディテールまで作り込まれているだけに、使い込んでみたくなる。