大企業と中堅企業の間のマーケットで競争が激化する2008年
河田氏: まず、年商5億~50億円未満の市場では、年商別に細かな製品構成を展開している大塚商会のERP「SMILE」シリーズが支持されています。大塚商会からハードウェア製品や通信機器を購入している中小企業は非常に多く、そのネットワークを「SMILE」の販売に活用しているようです。
次に年商50~300億円未満に強いのは昔「オフコン」と言われていた中堅・中小企業向けのシステムを手がけていた富士通とオービックです。2社は既存ユーザーのリプレイスに強く、カスタマイズのサービスやサポート体制を整えた系列の販売網も抜きん出ており、他社が2社の牙城を崩せないのが実態です。
また、300億~500億円の中堅企業の市場では、中堅から大企業への導入実績でよく知られる住商情報システムやSAPなどの名前が見られます。
このようにERP市場は規模別に市場の細分化が図られており、年商別の各カテゴリにマッチしたマーケティング戦略に成功した企業がトップシェアをおさめているのです。
――市場が細分化されているといった状況は今後のERP市場についても続いていくのでしょうか?
河田氏:2008年も年商別に細分化されたベンダーの競争はますます激しくなっていくでしょう。2007年に生まれた新しい動きとして興味深いのが、年商500億~1000億円未満のユーザー向けの市場がいよいよ顕在化し始めたということです。実はこの大企業と中堅企業の間の市場のユーザー向けの適切なERP製品がほとんどないため、新しいマーケットが残されています。住商情報システムはERPパッケージ「ProActive」のメインターゲットを少しずつ中堅から準大手に移行させようとしています。現在は競争の激しい中堅・中小企業の上の、年商500億円以上の企業をターゲットに、大企業のSIer経験という住商情報システムズならではの強みを活かす戦略に転換しているようです。
――すると、大企業と中堅企業の間に新しい市場が生まれるわけですね。
河田氏:住商情報システムは、SIerとして元々大きな力を持っているわけですから、その実績を活用するでしょう。日立製作所やNTTデータシステムズなどもこの市場は注目しているようですし、競争は激しくなっていくと思います。
また、冒頭で述べたSAPのAll-in-Oneが狙っているのも、まさにこの市場です。この空白地帯だったマーケットを皮切りに、これまで国産ベンダーの牙城だった中堅・中小企業のERP 市場で、国産ベンダーと外資系ベンダーとの競争が本格的に始まるのが2008年ではないでしょうか。
河田裕司(Yuji Kawada)
ノークリサーチ 研究員。2004年にノークリサーチ入社。主にSMB向けソフトウェア関連市場を中心に調査業務を行なう。ERPに代表されるエンタープライズ系パッケージソリューションを専門としている。