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「SaaSはXaaSへ」 ソフトウェアに限らないサービスに進化――IDC Japanの赤城知子氏

2008年01月01日 00時00分更新

文● アスキービジネス編集部

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今後、SaaSは「XaaS」に進化していく


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「SaaSはXaaSへ」――ソフトウェアに限らないサービスに...

――低価格化やアプリケーションの増加などで、大企業のSaaS導入も拡大していくのでしょうか?

赤城氏:中堅や大手企業に関して言えば、それぞれの会社で稼働中の既存システムとSaaSとの統合が難しいという問題があります。ユーザーが業務の一部にSaaSのアプリケーションを使うためには、データをSaaSベンダーに渡す必要が出てきます。しかし、企業の販売管理や財務会計などの高い機密性を求められるデータを扱う基幹系システムを他社に委ねるほど、SaaSのセキュリティは信用を得ていません。安全性が保障されるようになるまで、大企業はSaaSを全面的に採用するリスクを冒さないでしょう。

 もっとも、基幹システムに影響のない範囲で、部分的にSaaSを導入する企業は増えています。たとえば旅費・交通費の精算アプリケーションをSaaSで使い、基幹システムと連携するといった動きが実際に起きているのです。

――社内の既存システムとSaaSうまく共存させていく方向で普及が進んでいくということですね。

赤城氏:そうです。これは必ずしも大企業のユーザーだけに限ったことではありませんが、今後はSaaSに「SOA(サービス指向アーキテクチャ)」の発想を取り入れてシステムを構築することが重要だと考えています。今後、SaaSは単なる「ソフトウェア」ではなく、「あるビジネスプロセスのアウトソーシング」と理解されるようになり、「SaaS」(Software as a Service)から「XaaS」(X as a Service)とでも呼ぶべき存在へと発展する可能性があります。XaaSで提供されるオンデマンド型のサービスはソフトウェアに限る必要はなく、「配送業務」や「在庫管理」などの物理的なサービスも含んだものになります。ビジネスプロセス上必要とされているものなら「何でも(X:未知数の意)」含まれるようになるでしょう。

 将来的には企業はよりコアコンピタンスに経営資源を集中し、それ以外のビジネスプロセスに必要なものは、その都度XaaSで外部から自由に調達できるビジネス環境が生まれてくるのではないかと考えています。

赤城 知子(Tomoko Akagi)


IDC Japan ソフトウェアグループマネージャー。 国内調査会社の事業部長兼シニアITアナリストを経て現職。現在、ソフトウェアグループ統括するほか、エンタープライズアプリケーション分野全般を担当し、特にERPとSCMを専門とした調査に携わる。

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