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SaaS World 2007が開幕――企業向けシステムの“夢”に関心集まる

2007年03月28日 20時55分更新

文● アスキービジネス編集部

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3月28日、東京・品川の東京カンファレンスセンターで、「SaaS World Conference & Demo 2007」(主催:IDGジャパン)が開幕した。SaaS(Software as a Service)をテーマとした国内初の本格的なカンファレンスイベントには、セールスフォース・ドットコムや日本オラクルなど11社のベンダーが参加。会場内の体験ブースでは、来場者が熱心に説明に聞き入る姿が見られるなど、SaaSへの関心の高さを印象付けた。


「ASPでもやってみようか」ではダメ、成功するSaaSモデルとは?


経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課長 鍛冶克彦氏

経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課長 鍛冶克彦氏

「SaaSは、簡単に利用できるという点において中小企業のIT投資に有効なのではないか。また、技術はあっても販売力が弱いITベンチャーにとっては、共通のサービスプラットフォーム上で提供することで、新しいチャンスが生まれるかもしれない。ユーザー、ベンダーともにSaaSは夢が広がる分野だ」

 今年、第1回目となる「SaaS World Conference & Demo 2007」(SaaS World)は、 経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課長の鍛冶克彦氏の挨拶で開幕した。同氏は「SaaSはまだ始まったばかりであり、さまざまな課題もある」とした上で、「政策面でどのような支援が可能か、現時点では明言できないが、何らかの形でバックアップしていきたい」と述べ、SaaSへの期待感を滲ませた。


 続く記念講演に登壇したアイ・ティ・アール代表取締役社長でシニアアナリストの内山悟志氏は、SaaSを「内部統制、SOAに次ぐ注目のキーワード」として紹介。企業向けソフトウェア市場の動向やSaaSが注目を集める背景、今後の展望などを語った。

アイ・ティ・アール代表取締役社長/シニアアナリスト 内山悟志氏

アイ・ティ・アール代表取締役社長/シニアアナリスト 内山悟志氏

 講演の中で内山氏は、一般に曖昧とされることが多いSaaSと従来型のASPとの違いについて、(1)アプリケーションだけでなくミドルウェアを含むソフト全体が対象、(2)メタデータの活用によるカスタマイズ性、(3)公開APIによる他ソフトとの連携性――と定義。「成功しているSaaSモデルの優れたところは100%ではなく、一定の満足するレベルでのカスタマイズができるように最初から設計されている点。逆に、既存のソフトを無理やりASPにしたものはたいてい失敗している」と分析した。

 今後、SaaSモデルでの成功が期待される分野について、内山氏は「データウェアハウス、データマイニング、コラボレーションツール」を挙げる。「経営者は博打のようなシステム投資にはお金は出してくれない。初期投資をかけず、パイロット導入に利用したり、必要なときだけ使う分野にSaaSのニーズがあるのではないか」。

 また、SaaSはシステムの運用を含む一種のアウトソーシングサービスでもあることから、「ビジネスユーザーが直接SaaSを利用するようになると『IT部門不要論』が出てくる可能性もある」指摘。「どのような姿勢でIT部門がSaaSに取り組むのか、今後の検討課題に上がってくるだろう」と述べた。

 28日はこのほか、米セールスフォース・ドットコムのワールドワイドコーポレートセールス&サービス プレジデントであるフランク・ヴァン・ヴィーネンダール氏による基調講演や協賛ベンダーによるセミナーが行なわれた。SaaS Worldは29日まで開催され、29日はマイクロソフトと日本オラクルによる基調講演を始め、計11のカンファレンスが開かれる予定だ。

多くの来場者で混みあう展示会場。「インターネット環境があればどこでも利用可能」というSaaSのメリットを生かし、各社とも積極的にデモを行なっていた

多くの来場者で混みあう展示会場。「インターネット環境があればどこでも利用可能」というSaaSのメリットを生かし、各社とも積極的にデモを行なっていた

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