SaaS/ASP事業者のサービス連携を目指す業界団体「SOABEX 研究会」は5月30日、第5回定例会を開催した。今回のテーマは「企業ディレクトリってなんだ!」。 SaaS/ASPの推進のみならず、今後、国内の企業活動全般の生産性向上に役立つと期待される「企業ディレクトリ」構想について、総務省 情報通信政策局 情報通信政策課の秋本芳徳課長が解説した。
「バラバラ」な企業コードは効率化の障害
「企業ディレクトリ」とは、官公庁や各種団体などによって各企業に割り振られているさまざまなID/番号情報を統合し、統一されたデータベースを構築しようという構想だ。データベースは、ネット上で参照できる共通の「企業台帳」として、さまざまな用途に利用できることを目指している。
現在、各省庁、業界団体、信用調査会社などが規定している「企業コード」は多種多様であり、まったくバラバラの状態にある。たとえば、各省庁関係のものだけを見ても、経済産業省の「事業所番号」が47万件、総務省の「免許人コード」は60万件、法務省の「会社法人番号」にいたっては220万件に上る。これらのコードはいずれも個別に管理されており、相互乗り入れや連携は図られていない。
「(企業で使われるコンピュータが)スタンドアロンがほとんどであった時代は、それほど問題ではなかった」(秋本課長)。だが、企業の情報システムがネットワークで内外と接続されている今では、こうしたコードの管理はコードを発行する側(各省庁や各種団体)にとっても、利用する側(ユーザー企業)にとっても非常に煩雑だ。
秋本課長は「企業によっては、1社あたり28個ものID(コード)が割り当てられてると聞く。ネット上で媒介する機能があれば、システム間のより効率的なICT利用につながり、付加価値があるのではないか」と話す。
企業ディレクトリの実現に向けて総務省では、すでに具体的な検討が始まっている。総務大臣の諮問機関である情報通信審議会が5月にまとめた「ICTによる生産性向上戦略(案)」の中では、共用可能な企業コードの実現に向け、企業ディレクトリの整備を目指すことが盛り込まれた。また、総務省とASPIC(NPO法人ASP・SaaS インダストリ・コンソーシアム)が設立した「ASP・SaaS普及促進協議会」でも企業ディレクトリの構築、その活用によるビジネスモデルなどについて論議。実現へ向けた動きは活発化しつつある。
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