世界中を魅了したエンタテインメントムービーの傑作「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの3作目となる最終作として劇場公開された「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」が5日、ついにDVDとしてリリースされた(関連記事)。
本稿では映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」で2007年アカデミー賞視覚効果賞を受賞した米Industrial Light & Magic(ILM)社のVFXスーパーバイザー、ジョン・ノール(John Knoll)氏への単独インタビューを敢行した。ノール氏がASCII.jpだけに明かしてくれた「パイレーツ」シリーズでのVFXの真相に迫る。
ジョン・ノール氏は、画像編集ソフトのワールドスタンダードである「Adobe Photoshop」の発明者で米アドビ システムズ(Adobe Systems)社のエンジニア、トーマス・ノール氏を兄に持つ。10月25日~26日に開催されたPhotoshopユーザーの祭典「Photoshop world」のために来日したお二人は、この基調講演でPhotoshop開発の経緯を披露した。その模様はインタビュー前編(関連記事)で詳しく報じている。
今回は単独インタビューとして、ジョン・ノール氏ご本人にうかがった「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの制作秘話をお伝えするとともに、基調講演の後半に披露された「パイレーツ・オブ・カリビアン」のメイキングのダイジェストを紹介する。
ディズニーランドのアトラクションが
名作映画に変貌を遂げる
―― 「パイレーツ・オブ・カリビアン」は、どのようなきっかけでお話があったのですか?
ジョン (シリーズ1作目である)「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」は、「スターウォーズ」シリーズのエピソード1、2、3の制作に携わっていた時に取りかかりました。スターウォーズ3作を制作する間に時間ができて、ちょうどエピソード2とエピソード3の制作の間に「呪われた海賊たち」を制作するお話をいただきました。
―― 話があってすぐに取りかかったのですか?
ジョン いいえ。最初に脚本を見た時に、タイトルを見てとてもいい作品になるとは思えなかったんです。正直、まったく興味がわかず、説得されないと(脚本を)読まないぐらいでした。ところが読んでみたらそれがよかったんですね。それですぐに監督のゴア・ヴァービンスキー(Gore Verbinski)氏に会うことにして、実際に会ってすぐに仲良くなったんです。彼の印象はとっても鋭くて切れると思ったんです。それで、この監督が引っ張ってくれるならついていこうと思いました。
―― 「パイレーツ・オブ・カリビアン」はディズニーランドの「カリブの海賊」を元にした映画ですが、アトラクションが基で映画になるとは思いましたか?(※ ノール氏のILMでの初仕事は、「キャプテンEO」「スターツアーズ」など、ディズニーランドのアトラクションでの映像制作だった)
ジョン それはまったく思っても見ませんでした(笑)。考えてみたらアトラクションそのものには、海賊や景色などがアイコン的にあるだけで、ストーリー性はないんです。なので自由に作品づくりができました。そうした中でも、アトラクションに入った時に目にする光景を作品の中でちらほら見せているんですが、そうしたアトラクションから引っ張ってきて使っているシーンは、かなりの反響を得ました。