10月25日と26日の2日間、「Adobe Photoshop」ユーザーの祭典として定着しつつあるイベント「Photoshop world 2007 勝利の鉄則」が東京都内で開催された。すべてのクリエイターにとって重要なこのイベントには、毎回国内外からゲストが登場して会場を盛り上げている。今回はPhotoshop誕生に関わった重要人物である、3人の「Photoshopスーパースターズ」が登壇した。
Photoshopスーパースターズとは、Adobe Photoshopの生みの親である米アドビ システムズ(Adobe Systems)社のエンジニア、トーマス・ノール(Thomas Knoll)氏と、その弟で2007年のアカデミー賞視覚効果賞に輝いた米Industrial Light & Magic(ILM)社のVFXスーパーバイザーのジョン・ノール(John Knoll)氏、そしてPhotoshopエヴァンジェリストとしておなじみの“Dr.”ラッセル・ブラウン(Russel Brown)氏の3人だ。今回の基調講演はこの3人を招いて行なわれた。
基調講演の冒頭、NAPP代表の鈴木ロウトーマス氏の挨拶に続いて、アドビ システムズ(株)のマーケティング本部プリント&パブリッシング部フィールドマーケティングマネージャの栃谷宗央氏が登壇し、新たな「Photoshopマーク」を披露した。そして「Photoshopはこのバージョンは10番目で、ここまで続いたものはなかなかないと思います。これも、トーマス・ノール、ジョン・ノールという兄弟のおかげです」とノール兄弟の功績を称えた。
この栃谷氏のコールに応えて最初に登場したのは、ジェダイの衣裳を身にまとった、ラッセル“アドビ-ワン・ケノービ”ブラウン。同時に登場したダース・ベイダーと一戦を交えたのち、Photoshopでダース・ベイダーを消すチップス(Tips)を早速披露した。いつものDr.ブラウンなら、続けて10以上の“スーパー・チップス”を披露するところだが、今回の主役はあくまで次に登場する2人。Dr.ブラウンの呼びかけで、トーマスとジョンのノール兄弟が登場すると、会場の興奮は最高潮に達した。
Dr.ブラウンは、過去に行ったデモンストレーションでもネタにしていた、Photoshopとスターウォーズの密接な関係を暴露しようと努力するが、当の本人たちが登場してはいまいち端切れが悪い。それでも「その証拠」として「スターウォーズ エピソードIII」でのデススター攻略作戦会議のシーンを引き合いに出し、スクリーンに投影されている「Photoshop 1.0」を出して(もちろんDr.ブラウンの計略なのだが)会場を湧かせたが、ついには「ノーですよ」と否定するノール兄弟が登場し、彼らにマイクを渡した。
今だから明かせる
Photoshop誕生までの道のりとは?
ノール兄弟の2人がPhotoshopを生み出すまでのストーリーは、後半のノール兄弟への単独インタビューでじっくりお読みいただくが、Photoshop誕生の大まかなストーリーは次の様なものだ。
大学卒業後、ILMでモーションコントロールのオペレーションを担当していたジョンは、仕事に行き詰まると、大学院でコンピューター科学の論文に取り組みつつ、プログラマーの仕事をしていた兄のトーマスに相談した。その際、トーマスが作った画像を表示させる便利なツールセットである「Display」が現在のPhotoshopの原型となった。その後、2人でノールズソフトウェアという会社を立ち上げると、最終的にはPhotoshopのコンセプトは米アドビ システムズに見い出され、今日に至る。
ジョン氏は、実際にPhotoshopが映画制作に用いられたのは「スターウォーズではなく『ABYSS』(アビス)でした」と指摘し、アビスに登場する“ウォータースネーク”の表現にPhotoshopが使われたことを説明した。ここでもDr.ブラウンが登場し、「いや、やはりスターウォーズが関係しているのでは?」とウォータースネークに写り込んだダースベイダーの姿を指摘すると(ここまでくるとDrの妄想?)、会場は呆れつつも大爆笑の渦に包まれ、ノール兄弟も苦笑しきりだった。
最後に来場者を代表して、電塾塾長の早川廣行氏とCCS Niteの鷹野雅弘氏が3人に質問した。鷹野氏が「Photoshop Ver.20があるとしたら、どのようなものになっていると思いますか?」と質問すると、トーマス氏は「Photoshopのバージョンは以前から決まっていて、今、Ver.42を作っているんです。(それを出してしまうと)マーケットにショックを与えてしまうので、小出しにしているんです」と軽いジョークを飛ばしながら、「本当のところはアドビでもわからないんです。自分もできあがったものを見て、いつも驚いています」と述べた。鷹野氏が「ぜひ、生きて『Ver.42』を見たいと思います」とジョークを受けて切り返すと、トーマス氏は「わたしは未来に行って見てきたんですよ。最近、パッケージがだんだん小さくなっていますが、Ver.42はこのくらい小さくなってますよ」と、指先でつまむような仕草をすると、会場にはドッと笑いが起きた。
次ページでは、ノール兄弟への単独インタビューの模様をお届けする。なお、基調講演後半のジョン・ノール氏による映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」のメイキング秘話と、“ILM”のジョン・ノール氏への単独インタビューの機会も得たので、これについては改めてレポートするつもりだ。