インターネットの登場により、既存メディアはいま転換期にある。ではメディアの古典である新聞はインターネットをどう生かすのか? それとも新聞はネットの大波に飲み込まれるのか? この連載では各新聞社のキーマンを直撃し、彼らのネット戦略や時代認識を読み解いていく。
今回は「asahi.com」を運営する朝日新聞社を取り上げよう。
年収1000万円以上の「勝ち組」比率が高いasahi.com
1995年8月にニュースサイトとしてスタートしたasahi.comは、今年4月には生活関連情報を盛り込んだ「総合情報サイト」としてリニューアルしている。
速報記事を柱としながら、食や趣味、ファッションなど、ライフスタイル関わるコンテンツを大幅に拡充した。コラムや書評記事とリンクしたショッピングコーナー、出張のための宿泊予約ページなど、「使うサイト」としての性格も加味している。
また、サイトにアクセスしてくるユーザー層は、時間帯によってちがう。そこで、ビジネスタイムにはニュース中心の記事編成に、夜間や週末には家庭からの利用を意識した構成とし、写真中心のレイアウトに変えるなど、曜日・時間帯ごとにトップページの見せ方を変えている。これ以外にも動画配信サイトの「asahi.com動画」や、ガジェットやツールバーの提供など、新しい形態の情報発信のあり方も模索している段階である。
読者層は年収1000万円以上の世帯が17.4%を占め、平均年収は約738万円だ。所得の高いビジネスパーソンの比率が高い。また朝日新聞の購読者が全体の55.8%に上っている。
大事件の一報はティッカーで速報する
朝日新聞社では、ウェブに出す記事、出さない記事をどう仕分けしているのだろうか? 朝日新聞東京本社 WEB編成セクション マネジャーの小野高道氏は言う。
「新聞の記事量は膨大です。すべてをウェブには載せられません。例えば朝刊は40ページが基本ですが、活字にすれば約18万字です。平均的な文庫本に置き換えると1.3冊分にもなります。ですからasahi.comには、速報のニュースを中心に掲載しています」
「もちろん紙の新聞より先に出るものもあります。例えば大事件・大事故の場合、第一報を早く知らせたい。朝夕刊が出るのを待っていては遅い。そんなときasahi.comでは、まず何が起きたか? という短いニュースをティッカーで流すケースもあります。産経さんはウェブファーストと言っていますが、うちにはうちのウェブファーストがあるんです」

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