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【短期集中連載】新聞はネットに飲み込まれるか? 第5回

紙とウェブを使い分ける朝日新聞社の論理(前編)

2007年11月20日 17時00分更新

文● 松岡美樹

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「朝日新聞の部数は10年前とたいして変わってない」


 一方、新聞の購読者数が伸び悩む現状についてはどう分析しているのか? また特にインターネットの影響についてはどう考えているのだろうか?

「新聞の部数が停滞しているという側面はあるでしょう。ですが総体として、べらぼうに減ったかといえばそうでもない。例えばうちは1995年8月にasahi.comを開設しましたが、当時の朝日新聞の部数は今とたいして変わりません」

「また『インターネットは新聞にとって脅威だ』と世間一般でよく言われます。ですが紙もウェブも、相互補完し合って両立し得るものです。紙は紙、ウェブはウェブと考えるのではなく、朝日新聞社は紙とデジタルを融合しようと考えています」



ネットでは速報記事、紙ではじっくりと読める続報を


 では融合とは具体的に何を指すのか? 紙とウェブをどう生かし合うのだろうか?

「asahi.comにはニュースの第一報が出ます。一方、その事件・事故の第二報以降やニュースの裏側、識者のコメント、分析・評論などを、紙の読者に新聞でじっくり読んでもらう。融合のひとつの方法ですね。何かが起こったとき、紙が出るのを待ってウェブでは何もしないよ、ということではない。これが相互補完ということです」

 ところがネットユーザーから見れば、こんな疑問もわく。

「それならウェブでは深く掘り下げた記事は読めないのか? ウェブで第一報を流し、ニュースの裏側や分析・評論もウェブでやればいいじゃないか。後者を紙で出す必然性はあるのか?」

 もちろん紙とウェブにどんな機能を担わせるのか? は企業戦略である。各社独自の判断があるだろう。紙の新聞本紙を維持し、同時に車の両輪としてウェブも考えるならば、こうした仕分けのしかたもありえる。要は方法論のちがいである。

 例えば仮に「うちはもう紙はやめた。ウェブに一本化する」という新聞社が出てくれば、彼らは両者のセグメントなど考える必要はない。逆にいえば仕分けのしかたには、企業としてのスタンスが表れるということである。

(後編に続く)


松岡美樹(まつおかみき)

新聞、出版社を経てフリーランスのライター。ブロードバンド・ニュースサイトの「RBB TODAY」や、アスキーなどに連載・寄稿している。著書に『ニッポンの挑戦 インターネットの夜明け』(RBB PRESS/オーム社)などがある。自身のブログ「すちゃらかな日常 松岡美樹」も運営している。

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