システムをどう日本語に対応させるかが課題だった
もともとアメリカで開発されたものを日本向けにローカライズすると言っても、ヨコのものをタテにするだけでは使いものにはならない。そこに、日本独自の考え方が加味されてこそ確かなプロダクトとして存在できる。日本語への対応にはどのような苦労があるのだろうか。
「前述のとおり、Zebraはメールに記された日本語を自動的に解析して、何が書いてあるかわかるシステムになっていますが、それゆえまず日本語を認識させるのが一苦労でした。英語は単語毎に区切られていて言葉を認識しやすいのですが、日本語は単語が切れ目なく続いていきます。どうやって1単語1単語を正確に認識させるかが困難でしたね。あとは、機能説明の文章をどうわかりやすくするかという問題がありました。英語をそのまま日本語にするのではなく、かなり意訳したところもあります。他社製品で使用されている表現でも、すでに日本で浸透している表現があればその表現を使い、Zebra独自のサービスを示す言葉は無理に意訳やカタカナにせず、英文のまま表記しました」
海外の開発者とのコミュニケーションの難しさ
今回のケースのように海外の製品を扱う場合、開発の過程で外国人の意識と日本人の意識の違いにも注意する必要があったそうだ。
「海外の開発者は日本語の特性や日本文化などを知らないので、まずそこから説明しなければならないし、時間の感覚も違います。発売計画のタイミングなども細かく説明する必要がありました。なかでも、日本語には漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字などいろいろな文字種や表現方法があり、それらが混在していることを伝えることに大変苦労しました」
岩上さんの仕事術。 UMLを使い、メンバーの意識を統一
現在、岩上さんのグループの仕事はスムーズに進んでいるそうだが、以前の会社では経験の浅いプログラマーの中には「プログラマーはアーティストだ」という意識が強すぎて、ドキュメントを書かなかったり、周囲に相談せずに自己流に固執するケースもあったそうだ。
「この仕事に限らないのですが、手を動かす前に、特にプログラムについてはUML(注1)などでドキュメントを作り、チームの意識を統一することから始めます。文章では伝わりにくいことも、図にして論理的にどうやって作るかをみんなが認識すればバグも発生しないでしょうからね。手間ではありますが、絶対に必要な作業です」
注1:UML(Unified Modeling Language)
オブジェクト指向のソフトウェア開発におけるプログラム設計図の統一モデリング言語。事実上、モデリング言語で現在もっとも普及している。
しかし、決してUML作りを強制せずそのままオレ流の作業をさせることも必要だと加える。失敗してはじめてUMLの大切さを理解するのだそうだ。
メールアプリケーションのこれから
フィードパスで仕事をする以前にITベンチャーで開発・マネジメントの仕事をしていたという岩上さん。はじめてZebraを見たとき、ワークスタイルの革命だと感じたそうだ。
「Zimbra Collaboration Suiteの動きを追う中で、日本語用にローカライズするという話を聞き、その開発に携わりたいと結局フィードパスに転職をしてしまいました。Zimbra Collaboration Suiteの機能にそれだけ魅力を感じたのです。SaaSでサービスを開始したことはユーザーの声を聞き、自らを向上させる大きなファクターになっていると思います。Zebraは、今後一般ユーザー向けのサービスが計画されています。そうすると、メールアプリケーションの考え方が大きく変わるでしょう。そのときZebraの第2幕がスタートします」
- ■取材協力
- feedpath Zebra
- フィードパス株式会社
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