図書館で名作をコピーできるようになる
── 「さまざまなサービスを提供」というのは、具体的にどのような使い方ですか?
津田 例えば、図書館にある蔵書検索のデータベースとDVD内のテキストを結びつけてしまえば、蔵書を全文検索して、内容で読みたい本を探すというサービスが実現できます。
また、視力が弱い人に本を読んでもらうために図書館側が文字を拡大してプリントアウトしたり、全盲の人のために音声読み上げソフトを使って音声データ化したものを配布するということも可能になります。
さらに言えば、紙の本だったら貸したあとに返してもらう必要がありますが、デジタルデータなら基本的に貸しっぱなしでOKです。利用者にSDメモリーカードやDVD-Rを持ってきてもらえば、その場でコピーして、利用者に「永久貸し出し」するなんてサービスもアリでしょう。
── それは面白い考え方ですね。
津田 もちろん、同じデータは青空文庫にもあるわけですが、図書館に行ったときに、青空文庫のことをよく知らない利用者が「SDメモリーカードスロット付き携帯電話機があったら、好きな文学作品を携帯電話機で見られます」というポスターを見たら興味持ってコピーする人もいるんじゃないですかね。
あとは、広告付き無料コピーサービス「タダコピ」※みたいなサービスと組み合わせるというのも面白いですよね。青空文庫のコピーに限ってタダコピの利用を許可して、無料で文学作品をプリントアウトして持って帰れるようにするとか。
書架の定番作品を、新刊に置き換えられる
── 利用形態だけでなく、「省スペース」という点でも注目ですよね?
津田 ええ。図書館の蔵書スペースには限りがあって、小規模な施設ではあまり多くの本を置いておけません。その一方で、毎年、数多くの本が出版されています。だから、図書館が新しい本を入れるためには、過去の本を捨てるなどして取り除くしかない。
もし青空文庫で提供されている6500作品を紙のコピーで貸し出すことができれば、それらの本を蔵書から除いて、空いたスペースに新しい本を置けるようになります。
さらに言えば、「歴史」「自然科学」「ビジネス本」といったように、文学以外で蔵書に個性を出したいと考えている図書館にとっても朗報となるでしょう。古典文学などの定番書籍をデジタル化できれば、特定ジャンルの書籍を空いた書架に増やせるわけです。すべての図書館が専門化する必要はありませんが、図書館が自由に動きやすい選択肢を持つことができた、ということが重要なんです。
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