2000年ごろの「ASPの失速」報道は、誤った情報による“騒ぎすぎ”が原因だった。しかし着実に実態が伴ってきたASP・SaaSは、さまざまな要素が具体的に準備されて市場に浸透しつつある。まもなく携帯電話の市場もターゲットとなるだろう。
過去の失速報道は「騒ぎすぎ」が原因
「10年前にASPが失速したという報道は、まだ実態が伴っていなかったにもかかわらず、世間に誤った情報が流れて騒ぎすぎたのが原因です」
こう話すのは、ASPIC Japan(NPO法人ASPインダストリ・コンソーシアム・ジャパン)常務理事の津田邦和氏。氏はASPの健全な発展のために精力的な活動を続けている。
「当時、ASPは、まだ技術が準備されていませんでした。Ajaxはなく、Webアクセラレーターもなく、セキュリティも不安。そしてインフラもブロードバンドではなく、まだISDNの時代でした。さらに、ベンダーとユーザーの間の取り決めであるSLA(サービスレベルアグリーメント)も規定がありませんでした。それにもかかわらず、過大な期待を持たれ、実態とかけ離れた情報が流れていた。それが1999年当時の実情です」
期待するあまり、実力以上に評価して潰してしまう──スポーツなどでもよく見られる図式だ。しかしASPはその後、地道に実力をつけてきた。ADSLと光ファイバー、CATVなどによるブロードバンドも普及した。SLAについては、総務省が2003年に200項目のガイドラインを出している。ASPが活躍する基盤が整ったのだ。