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【これだけは抑えておきたいSaaS・ASPの基本】

ますます市場が拡大する「ASP・SaaS」の未来 Part3

2007年11月08日 17時34分更新

文● 話●津田邦和

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2000年ごろの「ASPの失速」報道は、誤った情報による“騒ぎすぎ”が原因だった。しかし着実に実態が伴ってきたASP・SaaSは、さまざまな要素が具体的に準備されて市場に浸透しつつある。まもなく携帯電話の市場もターゲットとなるだろう。


「スマートフォン」も市場に


 ASP・SaaSの市場は、PCだけにはとどまらない。まもなくスマートフォン(PCに準ずるデータ処理機能を持った携帯電話)もASP・SaaSの大きな市場となることが予想されている。

「ビル・ゲイツとスティーブ・ジョブズというPC界の好敵手による、おそらくは最後の激突になるのがスマートフォンです。かたやWindowsモバイル6、かたやiPhone。マイクロソフトはOSだけを提供し、アップルはハード&ソフトというPCのときと同じ売り方です。しかし、注目すべきなのはスマートフォンが生み出す新しい市場です。スマートフォンのハードの粗利が1とすると、通信料金が2。ASP・SaaSはその数倍の利益になるのではないでしょうか」

 ASP・SaaSベンダーから見ると、スマートフォンは電話ではなく、「無線版のシンクライアント端末」。スマートフォンは2008年末までに世界中で2000万台の売れ行きが予想されているが、そのほとんどがASP・SaaSの端末として機能するのだ。

「2000万台は決して誇張した数字ではありません。これまでにブラックベリーは欧米で800万台売れたといわれています。iPhoneは発売75日間で100万台が売れたという報道があります。マイクロソフトとアップルが激突すれば、そのくらいの数字は可能性があると思います」

 新しいWindowsモバイル6搭載のスマートフォンは、ExcelとPowerPointのファイルを開くことができる。またWeb対応なので、財務会計、提案書、プレゼン資料、CRM、セールスフォースなど、さまざまなサービスが受けられるはずだ。ASP・SaaSベンダーたちは、そこを狙っているのだ。

「これまでに日本国内では8000万台以上の携帯電話が売れました。これからスマートフォンは少なくとも500万台から700万台くらい売れるでしょう。しかし、利益は後者のほうがずっと出るはずです。なぜなら、ASP・SaaSのサービスが利用されるからです。さらに、携帯電話会社にとっては、アプリケーションで差をつけることができるので、競争しやすくなります。アプリケーションで業界を丸ごと抱え込むこともあるかもしれません」

 ASP・SaaSの世界から見れば、スマートフォンには大きな商機が待ちかまえているのである。


津田邦和氏

著者・津田邦和(つだ くにかず)氏プロフィール

1954年札幌市生まれ。1978年に電気通信大学を卒業後、リコーに入社。1999年にASPICJapanの設立に参加し、現在常務理事。総務省「公共ITのアウトソーシングに関するガイドライン研究会」の取りまとめや、総務省ASP・SaaS推進協議会委員、東京都昭島市IT化3カ年コンサルプロジェクトなどを手がける。その他多数の自治体委員に就任。


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