個人的には今年が4度目の取材となる「Adobe MAX」(旧Macromedia MAX)。旧米マクロメディア(Macromedia)社が米アドビ システムズ(Adobe Systems)社に買収・合併され、両社の結晶として「Adobe AIR」(コードネーム:Apollo)というウェブアプリケーションをオフラインでも活用する新技術が提供される、そんな大きな変革に立ち会えたのは幸運以外の何者でもない。ここでは、4回の取材を通じて読み取ったAIRのビジネスモデルについてまとめておきたい。
AIRが生み出された理由
AIRがApollo(アポロ)のコードネームで発表された2005年の「Macromedia MAX」は、米アドビ システムズと米マクロメディアが合併完了する直前に開催された。オフライン/オンライン環境の垣根を越える新たなRIA(リッチインターネットアプリケーション)プラットフォームという、Apolloの構想がようやく判明した2006年の「Adobe MAX」においても、個人的には「どうしてこれがビジネスになるの?」と疑問を抱いていた。
アドビ システムズとマクロメディアはともに、クリエイターやデザイナーを主たる顧客として、開発ツールを18~24ヵ月周期でメジャーバージョンアップすることで、大きな収益を上げてきた(両社はクリエイティブツール以外にも、サーバーアプリケーションやビジネス支援のサービスなどを手がけているが)。
そこにApollo(AIR)が登場することは、どんな意味があるのか。単純に考えれば、クリエイターやデザイナーに新たな活躍の場を提供し、ビジネスチャンスを拡大するという意味はある。しかし、だからといって今まで以上にクリエイティブツールが売れる、とは思えない。Apolloの開発には、おそらく2年以上の期間と人員を当てているはずで、どうやってコストを回収するのか、はなはだ疑問だった。
今回のAdobe MAX 2007では、RIA開発者(クリエイター/デザイナーおよびウェブサービス開発者全般)に向けて、数多くのサービスや製品が発表されたが、その中にヒントが隠されていた。
- Buzzword(バズワード): AIR技術を用いて、オンライン/オフラインで文書作成や編集が行なえるウェブアプリケーション。5月にアドビ システムズが買収した米Virtual Ubiquity社が開発したもの
- Share(シェア): RIAを構成するコンポーネント(画像、音楽、XMLコードほか)を共有/管理するオンラインストレージサービス。同じくVirtual Ubiquityが開発
- Thermo(サーモ): XMLコードの予備知識を持たないデザイナーにもウェブサイトの開発・構築に参加を促すUI(ユーザーインターフェース)デザインツール(関連記事)
このほか、画像編集ソフトの代名詞でもあるアドビ システムズの看板アプリケーション「Adobe Photoshop」のSaaS版「Photoshop Express」の発表にも、同じ意図が含まれていると感じた。