会社の危機から学んだ、人とのつながりの大切さ
起業を決めた松井さんはお台場の東京メディアポートの中にある部屋を事務所として開業する。しかし当初まったく収入にはならなかったそうだ。しかし、その状況を気の毒に思った関係者や以前在籍した会社が、松井さんの会社に仕事を紹介していく。松井さんは、元々ITに関してのポテンシャルが高かったので、仕事は順調に増え、半年で2000万円の売り上げを計上する。結果的に初年度は200万円の黒字となった。
「出資者や以前在籍した会社の人に仕事を紹介していただかなければ、そこで終わっていたかもしれません。人とのつながりは大切ですね。起業直後はとにかく忙しかったです。会社員のときの3倍のスピードで物事が回っていたような気がします。困ったことは請求書を出し忘れ、入金が遅れることもありました。決して軽視していたわけではありませんが、それより、目の前の仕事をするので精一杯だったのです。黒字だと分かったのも、決算後です」
経営者が味わう“人を辞めさせる”という辛さと共同経営の難しさ
仕事が順調に増えて勢いに乗る松井さんは、ネットバブルの終焉期に勝負に出る。事務所を大きくし、スタッフも拡充する。しかし、バブルがはじけた後だったので、厳しい状況が待ち受けていた。
「会社の売り上げが思うように上がらず、当時20人くらいいたスタッフのうち5人に辞めてもらわらなければなりませんでした。1人1人に事情を説明して納得してもらいましたが、そのことが人生で1番辛い出来事でした。どうしてそうなったかと原因を考えると、共同経営者と経営について、また社員と彼らの考えについてよく話し合っていなかったんですね。それからは、共同経営者とは会社の方向性や何をすべきか、何をしないべきかなど、とことん話し合うようにしました。それまでは2人が違う方向を見ていたんです。話し合いの中で、お互いの考えや役割について意見がぶつかることもありました。でも、対決してもしょうがない、会社は危機なんですから。そこで、自分は現場の仕事の管理を、共同経営者は経営的な面をというように役割を明確にすることにしました」
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