かつて香港の電脳街は、ユートピアかつ暗黒なワンダーランドだった。
大昔の『月刊アスキー』(1992年2月号)に、筆者のH氏が“HONDA”ブランド(ロゴも本田技研工業ソックリ)のコンピュータを買ったという記事が載っている。
当時、香港の電脳街といえば、シャンシュイポの高登電脳中心(ゴールデンコンピュータセンター)が有名で、入り口に「写真撮ったら殺す」と書いてあるほど怪しさにあふれていた。コピーソフトやコピーハードなどのダークサイドも強烈だったが、パソコンが安いことは確かだった。
H氏が買ったパソコンは、486DX-33MHzのフル装備で日本円にして29万7000円というお値段。月刊アスキーの同じ号を見ると、NECや富士通は、まだ486DX-33MHzマシンを発売していなかった状況。スペックの少し下がる東芝のデスクトップ機が215万円、IBMは300万円とある(!) その価格差たるや、実に10倍だ。
これは香港で仕入れてきたパソコンを、仮に日本の相場の半値で売りさばいたとしても、末端価格では5倍に跳ね上がってしまうという意味。本体もさることながら見たこともないパーツや周辺機器があふれる電脳のレイユームン!* そしてなによりHONDAブランドの怪しい素性のマシンに大枚30万円を払うドキドキ感はなかなかのものがあった。
*レイユームンは採れたての魚を自分で選んで料理してもらう香港の観光地。
*
あれから15年が経つ。いつの間にか香港のパソコンの値段は日本とたいして変わらなくなってしまった。それに伴うかたちで、いつしか私の興味も香港の携帯やヲタク事情*なんかにシフトしてしまったのだった。
*ちなみに私は今年も“香港動漫節”に出かけてきた。これについては、ブログ“東京カレー日記”を参照してほしい。
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