米国では2006年の夏ごろから、日本では11月から流れはじめた“Get a Mac”(日本では“Macをはじめよう”)のテレビCM。私は、米国版を見たときに「なかなかいい広告じゃないの」と思っていた。
ところが、日本版のCMを見て「見るのも嫌」とか「これが流れると席を立ってしまう」とか「見識を疑う」といった感情を抱く人もいるようである。Macユーザーでも「面白いから好き」とか「ラーメンズだからいい」という人がいる一方で、その逆の人もいて、賛否両論。ちょっと物議をかもしている。
あのコマーシャルの制作者は、日本に来たときに“パペットマペット”のうしくんとカエルくんのやり取りを見て、あの構成を思いついたのだそうだ――というのはガセねたなのだが、コントというのは、ちょっと毒があったほうが「おいしい」こともあるはずなのだが。
Mac君をやっているジャスティン・ロングのこと
米国版CMでMac君をやっているジャスティン・ロング(Justin Long)について、ブログ“東京カレー日記”で3回に渡って触れた。
この役者について、私は、ここ何年か、こっそり注目してきたのだった。Get a MacのCMはこの“配役”が絶妙だと感じている。ジャスティン・ロングが米国でどういう位置付けの俳優かについては、洋モノ芸能界に詳しいAさんから送られてきたメールを見てもらえばイメージできるだろう。
ジャスティンは“ボンクラ”、
アメリカでいう“slacker”のイメージだと思うんです。
で、そういうイメージの役者を起用したことは
若い層にアピールする手段としては非常に上手いと思いました。
そうなのだ、あのMac君は、米国の当代最高のオマヌケさん──Aさんは“ボンクラ”と呼んでいますが──俳優なのである。そういう人でもMacを持つと、スマートに使えている。そこがあのCMのいいところであり、嫌味にならない点なのである。
私が、この役者に注目し始めたのは、2001年にエミー賞コメディ部門で、最優秀監督賞・最優秀脚本賞・最優秀キャスティング賞にノミネートされた『エド~ボーリング弁護士』からである。このドラマのシーズン2で、運動神経ゼロ、頭もよくない、ピントもずれていて、モテない、気が多い、なのにやる気まんまんの高校生役で登場する。
映画では、『ギャラクシー・クエスト』(1999年)でオタク少年役、『ドッジボール』(2004年)では、案の定ボールを当てられまくる負けイヌ軍団の象徴、『ハービー/機械じかけのキューピッド』(2005年)では、軟弱ながらヒロインの相手役となる。そして『ACCEPTED』(2006年)では、いよいよジャスティン・ロングの本領発揮となる。すべての大学入試に落ちてニセの合格通知を自宅に送るという映画なのだが、彼を当代随一の軟弱・迷惑系の役者として決定づける迫力があった。
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