マイクロソフト(株)は2日、東京都内にて記者説明会を開催し、MSNやWindows Liveなどネットワークサービスを担当するオンラインサービス事業部の今年度の事業戦略と、同社が“第2世代”と称する新しいWindows Liveサービスの概要について説明を行なった。第2世代のWindows Liveサービスは今年10月頃に正式スタートするもよう。
まず、事業部全体の事業戦略について説明した同社執行役常務 オンラインサービス事業部 事業部長の笹本 裕氏は、Windows Liveサービスの今までの取り組みについて、“MSNとLiveで提供する体験(エクスペリエンス)”“新たな広告領域の拡大”“マイクロソフト全体(One Microsoft)での大きな取り組み”の3点が中心課題であると述べた。最後の同社全体での取り組みは最も大きい要素であったが、現状では「ソフトウェアとサービスの融合まではいかなかった」など、まだ課題があることを挙げた。
そのうえで笹本氏は今後の戦略として、広告・エコシステム面とポータル/サービス面の2領域に対して、それぞれアプローチを用意して取り組むとした。例を挙げれば、オンライン広告会社の米aQuantive社の買収や、リッチコンテンツ作成の基盤技術となる“Silverlight”(関連記事)のリリース、ニュースから動画共有サイトなど独自のコンテンツのラインナップなどが挙げられた。また、広告配信先のプラットフォームとしては、既存のWindowsやWindows Mobileだけでなく、今年中にXbox Liveも加わるという。
続いて登壇した同事業部 MSNエグゼクティブプロデューサーのショーン・チョウ(儲 俊祥)氏は、MSNのコンテンツ戦略について説明を行なった。チョウ氏は直近の1年間に行なわれた新サービス展開施策を、非常に多くのサービスを開始したとしたうえで、「今までは“知る”や“調べる”をメインにサービスを作ってきたが、2007年に入って“楽しむ”要素が増えてきた」と述べて、情報を求めて立ち寄るポータルからの脱却が進んでいることを示した。
またコンテンツの見せ方も新しい提案を行なったとして、環境保護についてのコンテンツをまとめた“和ころじー”や、指定したキーワードで引いた検索結果をポップアップ表示する“コンテキスチャルサーチ(仮称、関連記事)”などの取り組みを紹介した。
これらの取り組みを踏まえて、2008年度は「メディア色を強めるのがキーワード」(チョウ氏)として、ポータルメディア化を進めることを目標として掲げた。25~45歳の男女を主たるターゲットユーザーに設定し、これらの世代に訴求するエンターテインメントコンテンツを揃えるとしている。
コンテンツの見せ方についても、Silverlightを使った表現力豊かなコンテンツを実演して見せたほか、動画やCGM(Consumer Generated Contents)との融合を図ると称し、その例として同社が開発中の動画共有サイト“Soapbox”(ソープボックス)のデモを披露した。同分野では先行するYouTubeなどに対しては、事業者ごとのユーザーインターフェースのカスタマイズ性などをアピールしていくようだ。
Silverlightのデモ映像。左は映画のトレイラーだが、映像上に画像サムネイルでチャプターリストが表示されている。右はピアノの鍵盤を模したアプリケーション。クリックすると鍵盤がアニメーションして音が鳴る
チョウ氏はこれら“ユーザー層の明確化”“新しい(見せ方による)メディア・エクスペリエンス”“厳選されたコンテンツ”の総称を、同社では“プログラムド・エクスペリエンス”と呼んでいると述べた。そして目指すところを“Only on MSN”と表現して、MSNでしかできない体験を、プログラムド・エクスペリエンスの要素で提供していきたいとした。10月にはこれを踏まえた変革が開始されるとのことで、その第1弾は、10月1日より開設される“MSN産経ニュース”(関連記事)となるようだ。また日本語版のSoapboxも、2008年の早い時期には提供開始されるもようだ。
最後に登壇した同事業部 プロダクトマネージメントグループ Windows Liveチーム ディレクターの小野田哲也氏は、“第2世代”のWindows Liveの戦略として、WindowsやWindows Liveの各サービスとのシームレスな連携をキーワードとして、それを実現するための取り組みについて説明した。
現在の“Windows Live Mail”や“Windows Live Spaces”、“Windows Live Messenger”といったWindows Live関連サービスは、それぞれ個別のログイン作業が必要となっている。同社では以前から、将来的にはシングルサインオンで各サービスを利用できるようにすることを表明していたが、いよいよ具体化の時期を迎えたようだ。
個々のサービスについても、拡張の内容が語られた。まず“Windows Live Hotmail”は8月中に拡張が行なわれて、現在の無料版が容量2GBまでなのに対して、拡張後は2倍以上の容量に増えるという。個人向けホームページサービスの“Windows Live Spaces”は、1クリックで画像を投稿できる“Windows Live Photo Gallery”と呼ばれるアプリケーションが提供される。また、“Windows Live SkyDrive”という新しいオンラインストレージサービスも開始される。各クライアントアプリケーションは、Vista組み込み(Windows XPではWindows Updateからの移行が必要)の“Microsoft Update”を通じてアップデートが提供されるなど、OSとの統合が進められている。
そのほかにも、Windows Vistaのメール機能“Windows Mail”はWindows Live Mailに統合される。Windows Live Mailと“Outlook 2007”の情報共有機能も取り入れられて、OutlookでLive Mailのアカウントにアクセスする機能が実装されるほか、連絡先情報を共有する機能も実装される。また、Windows Liveに対応し、関連アプリケーションがプレインストールされたスマートフォン用OS“Windows Mobile 6”を使った、Liveサービスの活用デモも披露された。
