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“世界最速”で成長するソフトベンダーの戦略とは?――米インフォア役員がカンファレンスで語る

2007年03月23日 19時29分更新

文● アスキービジネス編集部

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日本インフォア・グローバル・ソリューションズは、3月23日、東京都内でプレスカンファレンスを開いた。米インフォアでERP事業の統括プレジデントを務めるジェリー・ルーリー氏が来日し、同社の製品戦略を語った。


設立から5年で業界3位に浮上したインフォア


 米インフォア・グローバル・ソリューションズは、2002年に設立された業務アプリケーションベンダーである。わずか5年でERP/CRM/SCM/HCMなどのパッケージラインナップを揃え、「SAP、オラクルに次ぐ業務アプリケーションベンダーとして3位、全ソフトベンダーの中でも10位に入る」(エンタープライズ・ソリューションズ・グループ プレジデントのジェリー・ルーリー氏)まで漕ぎ着けた。だが、現時点における日本での知名度は決して高くないのも事実だ。ルーリー氏は「インフォアとはどんな会社なのか、まず明らかにしたい」と切り出し、同社の紹介を交えて戦略を語った。

米インフォア・グローバル・ソリューションズ エンタープライズ・ソリューションズ・グループ プレジデント ジェリー・ルーリー氏

米インフォア・グローバル・ソリューションズ エンタープライズ・ソリューションズ・グループ プレジデント ジェリー・ルーリー氏

 「我々が業務用ソフトベンダーを始めるにあたり、市場には2つの選択肢があった」。ルーリー氏はこのように話す。それは、SAPやオラクルのような巨人ベンダーか、特定分野に強みを持つニッチベンダーか、である。だが、前者は特定業種に対する専門的なソリューションに弱く、後者は財務面で不安定という課題があることから、「インフォアは、この2つ以外の会社になろうと考えた」(ルーリー氏)。

 そこで同社はまず、業種・業界特化型のソリューションにフォーカスし、顧客満足度を得る戦略に出た。マピックスやSSAグローバル、データストリーム、フロントステップなど、特定の業界・業種に実績を持つベンダーを次々と買収し、それぞれの分野に強い人材を集めた。ルーリー氏は、現在のインフォアの特徴として、各業種への豊富な経験・実績を持つプロフェッショナル集団であること、顧客に対して低いTCO(Total Cost of Ownership)を提供できること、グローバルで展開できる規模を持つことを挙げる。


成長のための製品戦略は「顧客第一主義」


 そのインフォアが掲げる製品戦略は「顧客第一主義」というシンプルなものだ。この戦略に基づき、同社は顧客に対して(1)価値向上、(2)拡張、(3)発展――の3つのメリットを提供するとしている。(1)では、バージョンアップを顧客の意向で決められるように、従来から提供する製品の機能強化や保守サービスを継続して提供していく。「30年間使い続けている顧客に対しても、我々はサポートを続けている。すぐに拡張する必要がなければ、そのまま使い続けてかまわない」(ルーリー氏)

 (2)に関しては、同社の持つ豊富な製品ラインナップの中から、必要に応じて機能を追加することができる。そして(3)では、SOAによって既存システムを含むシステム連携を実現する。ルーリー氏は「SOAによって必要なコンポーネントから部分的に導入でき、TCOを削減できる」と話す。

 インフォアが提唱するSOA「Infor Open SOA」は、標準技術、低コスト、イベント指向を謳う。標準技術を採用しているためプラットフォームの変更が不要な上、SOA連携の基盤となるESB(Enterprise Service Bus)はコンポーネント導入時に無償で提供される。そのため、低コストでSOAを実現できるのがメリットだという。また、Open SOAは、あるコンポーネントが感知したイベント情報をもとに他のコンポーネントが連動する「イベント指向型SOA」を実現するとしている。これは、たとえばEAM(Enterprise Asset Management)が感知した工場の故障情報をERPで受け、生産計画の見直しを検討する、といったことを可能とするものだ。

 こうした一連の取り組みにより、インフォアの保守契約の更新率は「極めて高い」(ルーリー氏)状況にあるという。一般的なベンダーの更新率が90%程度であるのに対して、インフォアは95%を実現。また、グローバルで年間2000社の新規顧客を獲得するなど、顧客基盤も広がりつつある。ルーリー氏は「多くの企業は、なるべくベンダーを集約したいと考えている。顧客の信頼を獲得できれば、我々がビジネスをさらに拡大することは可能」と話し、顧客満足度向上による成長に期待を込めた。

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