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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第335回

日本のコンテンツ産業、海外市場で“半導体超え”──20兆円市場の鍵を握るのはマンガか

2025年05月13日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 日本のコンテンツは強い。そう感じる機会がときどきある。

 たとえば、日本で働く外国人に「なんで日本を選んだの?」と聞くと、「日本のアニメが好きなんだよね」と答えた人が何人かいる。さらに、具体的にどんな作品が好きなのかを聞くと、ドラゴンボールやONE PIECEといった超メジャー作品の名前が返ってくる。日本のアニメが好きすぎて、大学で日本語を専攻し、現在は日本の企業で働く人がいる。南米出身で、日本に住むアニメ好きもいる。

 日本のコンテンツはすでに、そこそこ世界に良い影響を与えていそうだが、政府は、コンテンツ産業を日本の基幹産業の一つと位置づけ、2033年までに海外市場規模を20兆円に成長させるという目標を掲げている。2025年5月9日には、「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」を考える経済産業省の有識者会議が「中間取りまとめ」を公表した。

 日本のコンテンツを、もっと海外に売り込んでいくには何が必要なのだろうか。中間取りまとめは、アニメやゲーム、マンガなど10分野についてアクションプランを示している。

プラットフォームに流れる海外売上

 最近、あちこちで見かける数字だが、日本のコンテンツ産業の海外での売上は、鉄鋼産業、半導体産業を超えている。以下は、2023年のデータだ。

コンテンツ産業:5.8兆円

半導体産業:5.3兆円

鉄鋼産業:4.8兆円

 この報告書では、ゲーム、アニメ、出版、映像、音楽を「5分野」と位置づけているのだが、海外での売上をけん引しているのは、やはりゲームとアニメだ。次は、この5分野の2022年の海外売上のデータだ(ヒューマンメディア『日本と世界のメディア×コンテンツ市場データベース 2024』)。

ゲーム:2兆7780億円

アニメ:1兆4592億円

出版:3200億円

映像:1310億円

音楽:データなし

 2010年からの12年間で、音楽を除く4分野は、いずれも大きく海外売上を伸ばしている。しかし、アニメ、出版、映像についてこの報告書は「売上の多くは海外企業に流れている」と指摘している。アニメと映像はいずれも、NetflixやAmazonが配信プラットフォームを握っている分野だ。報告書には書かれていないが、おそらく売上が流れている先には、こうしたプラットフォーム企業があるはずだ。

中韓の台頭

 この5分野では、国家間の競争が激化している。報告書が指摘するのは、中国と韓国の台頭だ。まず、韓国のK-POPは音楽の分野で世界的な人気を得ている。映像の分野でも、韓国発のドラマは、配信プラットフォームで世界的なヒットを連発している。ウェブトゥーン(おもにスマホに最適化したマンガ)の分野でも、韓国企業が台頭している。中国は、ゲームの分野で勢いがある。

 現在、少なくともゲームとマンガ、アニメの分野では、日本は優位にあるように見えるが、中国、韓国の勢いを考えると安泰とは言えない。報告書は、日本の現状について、「原作の多様性に優位性はあるが、デジタル対応に遅れ」があると指摘している。さらに、日本が誇るアニメ、マンガについても、「生成 AI の登場により、日本が優位性を持つ2次元アニメ、漫画などの分野においても、中長期的には低下するおそれ」があるという現状認識を示している。

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