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アスキースマホ総研・白書 第5回

「DSDS」にまつわる謎をクアルコムにも聞いてみた!

2つの番号を同時待受! スマホ好きなら知っておくべき 「DSDS」のすべて (1/4)

2016年09月07日 12時00分更新

文● アスキースマホ総研、山根康宏

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ドコモ(LTE)とY!mobile(3G)の2回線を同時待受け可能な「Moto G4 Plus」

 モバイル業界のさまざまな発表会やイベントを取材し、四六時中スマホのことを研究し続けるチームがアスキーにいた! そう、彼らの名前は「アスキースマホ総研」。今回はひさびさのモトローラ端末「Moto G4 Plus」で話題にあがった「DSDS」(デュアルSIM、デュアルスタンバイ)とは何かを紹介します!

 山根博士がデュアルSIMまわりの名称や仕様を整理し、海外の事例をレポート。さらに、「DSDS」の実装には欠かせないスマホの心臓部を製造するクアルコムへのインタビューも実施! 夏の終わりに、DSDSをマスターしよう!

 「1台のスマートフォンで2枚のSIMが同時に使える」。そんな夢のような製品が2016年になってから続々と登場している。これまでにもSIMフリー製品を中心に、SIMスロットを2つそなえたデュアルSIMスマートフォンは数多く販売されてきた。だが、片側は2G方式にしか対応しておらず、実質的には「2枚のSIMを入れて、1枚だけを切り替えて使う」ことしかできなかったのだ。

 しかし、いまや片側が「4G」と「3G」、そしてもう片側が「3G」対応で日本でも2枚のSIMを同時待受けできる製品が海外だけではなく、日本でも発売になっている。4Gと3Gを同時に使えるデュアルSIMスマートフォンの登場で、日本のスマートフォン業界は新しい時代を迎えようとしているのだ。

「DSDS=Dual SIM Dual Standby」2枚のSIMを同時に使える

 シャオミが2016年3月に発表した「Mi 5」や、ASUSが6月に発表した「ZenFone 3」シリーズ、そしてモトローラが日本で7月から発売した「Moto G4 Plus」は、2枚のSIMを入れてそれぞれを同時待受けできる製品だ。海外ではすでにこの機能を持ったスマホは多数販売されており、日本でもようやく「1端末2枚SIM」の運用も可能になろうとしている。

 これらのスマホにはSIMスロットが2つ搭載されており、片側は4G(LTE)と3G(W-CDMA)、またもう片側は3G(W-CDMA)に対応している。それぞれをプライマリー側、セカンダリー側と区別すると、プライマリー側にドコモのSIMを入れ、セカンダリー側にMVNOのSIMを入れて、2回線を同時に待ち受けすることができるのである。

4G(LTE)と3G(W-CDMA)のDSDSに対応した最初の製品ともいえるシャオミ「Mi 5」

モトローラの「Moto G4 Plus」。SIMスロットを2つ備える

 また、それぞれのスロットは2G(GSM)にも対応している。つまり、海外に持ち出せば、プライマリー側はLTE、W-CDMA、GSMの回線を、セカンダリー側はW-CDMA、GSMの回線で、それぞれ同時に待ち受けできるのだ。

 このように2枚のSIMを利用可能で(デュアルSIM)、2回線同時待受け(デュアルスタンドバイ)可能なタイプをDSDS(Dual SIM Dual Standby)と呼ぶ。

 実はこれまでにもDSDS対応の製品は日本で多数販売されてきた。SIMフリースマートフォンの多くがSIMスロットを2つ搭載しているのだ。しかし、そのいずれもが「プライマリが4G/3Gになると、もう片側のセカンダリは2Gのみ」というDSDSだった。日本では2G(GSM)の電波は飛んでいないので、せっかくのDSDS対応でも、片側のスロットに入れたSIMは電波をつかむことができないのだ。

 なお、「2つのスロットがどちらも4Gに対応」をうたう製品もあるが、これはSIMを入れ替えなくてもプライマリー、セカンダリーそれぞれを切り替えて4Gで利用できるということ。そのため、セカンダリー側を「4G/3G」にすると、プライマリー側は「2Gだけ」となり、日本では同時待ち受けはできず片側のスロットに入れたSIMしか使えないのである。

デュアルSIM対応のASUS「ZenFone Selfie」。DSDSだがセカンダリー側は2G(GSM)のみ対応で日本では利用できない

FREETELの「SAMURAI 極」。セカンダリーが2GなのでDSDSは目立つアピールはされていない

 実はデュアルSIM対応スマートフォンは数年前から実在していた。そして、現在は3つの方式が採用されているのだ。装着した2枚のSIMをどのように使用するかで、それぞれの方式には大きな違いがある。まずはその3方式をおさらいしよう。

その1
「デュアルSIMシングルスタンドバイ」(DSSS、Dual SIM Single Standby)

 SIMスロットは2つあるが、同時利用はできずそれぞれを切り替えて利用する。どちらもSIMスロットも音声通話とデータ通信に対応する。初期のデュアルSIMスマートフォンに見られた以外では、モバイルルーターの一部製品にこのタイプが見られる。

その2
デュアルSIMデュアルスタンドバイ(DSDS、Dual SIM Dual Standby)

 現在最もメジャーな方式で、それぞれの回線を同時に待ち受けできる。ただし、片側が通信を行なうともう片側の通信は切断される。プライマリー側が音声通話とデータ通信、セカンダリー側が音声通話のみに対応するタイプがほとんど。

 通信方式はZenFone 3やMoto G4 Plusのように「4G/3G/2G」+「3G/2G」に対応したものが2016年になってから増えている。現時点で世界でメジャーなのは「4G/3G/2G」+「2G」または「3G/2G」+「2G」のデュアル方式で、途上国向けには「2G」+「2G」のDSDSスマホもある。

その3
デュアルSIMデュアルアクティブ(DSDA、Dual SIM Dual Active)

 2枚のSIMそれぞれ待受けが可能で、どちらのSIMを使っても音声通話、データ通信が可能。現時点での対応製品はほぼ無い。

 このようにデュアルSIMには3つの方式があるが、現時点で販売されているスマホは実質的にDSDSに対応したもののみ、と考えてよいだろう。

 このDSDS対応スマホは、海外ではすでに多くの国で利用されている。しかも、デュアルSIMスマホが登場したころは、新興国や途上国に利用が限られていたが、最近ではヨーロッパやアジアの先進国の中でも利用者が増えている。

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