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科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第134回

【JSTnews10月号掲載】NEWS&TOPICS 創発的研究支援事業 研究課題「オートファジーの脂質コード」

不要な膜だけを選んで壊す、脂質分解酵素の強力な力を制御

2026年10月27日 12時00分更新

文● 中條将典

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 細胞には、不要な成分を膜で包んで、細胞質の中にあるリソソームや液胞の内部に運んで分解するオートファジーと呼ばれる仕組みがあります。液胞内に運び込まれたこの膜構造をオートファジックボディ(AB)と呼び、酵母では「Atg15」がABの膜を分解する酵素として知られています。しかし、強い脂質分解活性を持つAtg15が、なぜABの外側にある液胞膜を分解しないのか、液胞内でどのように活性化するのかはわかっていませんでした。

 東京科学大学総合研究院の堀江(川俣)朋子准教授らの研究チームは、たんぱく質構造予測AI「AlphaFold(アルファフォールド)」、分子動力学シミュレーション、酵母細胞を用いた実験、酵素活性を測る実験を組み合わせた研究でこの活性化の仕組みを解明。Atg15は普段、脂質を分解する機能を持つ活性中心という部位が働いていない状態にありますが、液胞内でたんぱく質分解酵素によりAtg15のカルボキシル末端(C末端)が切断されて膜へ結合すると、活性中心が機能し始めます。C末端の切断後にもAtg15の立体構造の変形、膜への結合の調節など何段階もの「安全装置」が存在し、酵素が活性化すべき場所とタイミングを制御。分解すべき膜以外を分解してしまわないよう、巧妙な仕組みが存在していることがわかりました。

 今後、他の酵素がどのようにして不要な膜だけを安全に壊すのかを調べることで、オートファジーや脂質代謝の理解がさらに進むことが期待されます。また、AIとシミュレーション、実験を連携させることの有効性を示す事例としても注目されます。

(Ⅰ)多胞体によってAtg15が液胞内に運ばれ、(Ⅱ)アミノ末端(N末端)、(Ⅲ)C末端が切断された後、(Ⅳ)ABの膜に結合することで赤い丸で図示した活性中心が開いて活性化し、膜を構成する脂質を分解する。

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