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「フィジカルAI開発支援プログラム」成果発表会を全社レポート

物流、病院、家事まで変える“フィジカルAI”最前線 AWSが支援する日本企業14社の挑戦

2026年09月04日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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豆蔵 / MW / メルカリ / リコー

 10番手は、ITコンサルの領域にとどまらず、13年にわたりロボット事業も展開する豆蔵だ。同事業において、ソフトからAI、ロボット、エレキ(電子回路)までのフルスタックな開発力を強みとしているという。

 プログラムにおいて同社は、自社開発したヒューマノイド向けの「板金部品の整列アプリ」における2つの技術課題の解消に挑戦した。1つ目は「上半身制御のVLAによる知能化」だ。テレオペでデータ収集をもとに、AWS上でファインチューニングを行い、高精度な板金整列の制御を達成。すべてをVLAで解決するのではなく、動作特性に応じてルールベースの制御で補完することで、タスク成功率を高めたのがポイントだ。

 2つ目の「下半身制御の独自ポリシー構築」では、シミュレーション環境で深層強化学習を行い、しゃがむ動作の制御を実現。この2つの成果を統合して、板金整列に必要なヒューマノイドの全身制御を達成した。豆蔵の大国征司氏は、「産業利用においては、VLAだけではなくルールベースで補うハイブリッド構成が求められる」と実感したという。

全身制御では作業に必要な関節を絞ることで学習データを抑えた

プログラムを通じた学び

豆蔵 大国征司氏

 11番手は、テクノロジーを活用した未来的な「生きた家(Living Home)」をコンセプトに掲げるハウスメーカー・MW(ムウ)だ。同社は、いまだ自動化が難しい「家事からの解放」を目指し、フィジカルAIに取り組んでいる。

 同社が開発を進めているのが、天井に吊り下げられたガントリー型ロボット「MW Robot」だ。日本の狭い家屋に対して、デッドスペースである天井を活用するというアプローチをとっている。このロボット用の基盤モデルの開発のためにプログラムに参加した。

 現時点では、学習用のデータ収集施設を立ち上げ、専用機器50台を用いて年間5万時間におよぶ「家事学習用データ」の収集をスタートさせたところだ。最終的には、2.5PB(ペタバイト)という膨大なデータを基に、AWS上でモデル学習を進めていく。 MWの浅谷学嗣氏は、「10年後にはすべての家事の完全自動化を実現したい」と目標を述べた。

ガントリー型ロボット「MW Robot」

MW Robot用のAI開発サイクル

MW 浅谷学嗣氏

 12番手は、C2Cのフリマアプリを展開するメルカリだ。現在同社は、国をまたぐ「越境取引」を推進しており、2028年までに50カ国以上へのアプリ拡大を目指している。実際に過去4年間で19倍に急成長している領域だ。

 しかし、海外に商品を発送する際には、商品の写真を撮って、出品情報と同一かどうかをチェックする「検品作業」が不可欠だ。同社はプログラムを通じて、この作業の自動化を検証している。

 今回の検証では、多数のステップを要する「靴の検品」にフォーカスし、VLAの抱える3つの課題の解決を図った。視覚偏重で手先の器用さが不足する課題には、力覚・触覚センサーの情報をモデルに与えることで解決。学習時の視点に依存する課題には、AIによる合成画像によって推論時の視点を最適化した。最後に、データ収集が難しいという課題に対しては、人の作業をロボット学習データに変える「UMI(Universal Manipulation Interface)」を活用してデータ収集自体を簡易化させた。

双腕ロボット向けVLAモデルを開発

双腕ロボットが検品をする様子

 メルカリの小堀訓成氏は、「2028年までに、まずは自社倉庫の20%を自動化して、年間2億円のコスト削減につなげたい」と目標を語った。

メルカリ 小堀訓成氏

 ラストを務めたのは、AI時代の業務変革(AX)を推進しているリコーだ。同社は、4ステップでのAXビジョンを掲げており、最終ステップとして位置付けているのがヒューマノイドの現場展開だ。

 そのヒューマノイド向けのAIモデルを開発する中で、行動データの不足と身体性(エンボディメント)ごとのモデル開発が非現実的という2つのボトルネックが生じたという。そこで、「共通の行動」を学習させた「LAM(Latent Action Model)」を用いて、複数のエンボディメントで再利用するアプローチを採用。プログラムでは、このLAMの学習環境をAWS上に構築した。

 こうして構築したLAMの評価については、自社部品をつまんで配置する作業(ピックアンドプレース)を題材に、3つの異なるハードウェア構成のシミュレーション環境および実機環境で駆動を確認。LAMベースのモデルはすべての構成で高精度を達成し、さらにモデルサイズを3分の1に軽量化しても性能を維持できるという結果が得られた。今後は、AWS上にフィジカルAI向けの開発パイプラインを構築し、自社展開や顧客との共創につなげていく計画だ。

AWS上での学習環境の構築

LAMベースのモデルの評価

リコー 担当者

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