「フィジカルAI開発支援プログラム」成果発表会を全社レポート
物流、病院、家事まで変える“フィジカルAI”最前線 AWSが支援する日本企業14社の挑戦
2026年09月04日 08時00分更新
アトム / オムロン サイニックエックス / ZEALS
ここからは、同日披露された13プロジェクト(14社)の成果を紹介する(登壇は五十音順)。
まずは、ヒューマノイドAIロボットの実装を通じて「国内GDPの1%引上げ」を目指すアトムだ。2025年11月に創業したばかりのスタートアップでありながら、既に45億円の資金調達を達成。機体や基盤モデルの開発、データ収集拠点の整備を加速させている。
同社では、今回のプログラム用にAWS上でパイプラインを構築し、ロボット制御やモデル学習の検証を進めた。具体的な成果としては、シミュレーション(Isaac Sim+Isaac Lab+MuJoCo)での歩行・全身制御の学習を経て、ヒューマノイド実機で通常歩行や早歩きに成功したほか、遠隔操作による教師データ(テレオペデータ)による「VLAモデルの学習」において、荷物の仕分け作業で一定の精度を達成している(モデルは非公開)。
今後は、200台規模のロボットと30万時間のデータ、数十億パラメータのモデルを掛け合わせた大規模な検証を推進する方針だ。アトムの大田黒紘之氏は、「今後は、国内で初めてロボット基盤モデルの“スケーリング則”を証明するプレイヤーを目指したい」と展望を語った。
2番手は、オムロングループの研究開発拠点であるオムロン サイニックエックスだ。今回のプログラムを通して、ロボット自身が「見る・理解する・行動する・振り返る」という、フィジカルAIのループエンジニアリングの構築に取り組んだ。
「見る・理解する」のステップでは、「AIの動画理解」を評価するベンチマークを実施。その結果、最先端のAIであっても時系列情報の理解が必要になることや、AI自身が犯したミスは見落とされやすいという課題が明らかになった。そして現在は、小型モデルの理解力をベースに、ロボットをより高度に制御する手法の研究を進めている。
「行動する・振り返る」のステップでは、動作中に発生した失敗の要因をAI自身に出力させ、精度を自己改善していく仕組みを検証中で、この改善ループを繰り返すことでモデルの軽量化を目指している。オムロン サイニックエックスの牛久祥孝氏は、「身近にあるロボットがそのまま賢くなる未来を実現したい」と展望を述べた。
3番手は、2026年8月に“準国産”のセミヒューマノイド「D1」を発表したばかりのZEALS(ジールス)だ。同社は、日本のフィジカルAIにおける勝ち筋ともいえる「現場データ」を収集すべくロボット開発に着手。日本の室内環境に最適化されたD1は、小回りが利いて転倒リスクが少ない台車型の足回りを採用。横幅は48cmと、コンパクトな設計が特徴だ。
準国産である背景には、500万円という販売価格を成立させる狙いがある。ゼロから設計しつつ、パーツを世界中から調達して国内で組み立てることで、市場への投入スピードも上げている。2026年度は「100台の量産」と「1万時間の稼働」を目指しており、既に重工大須病院に投入され、35時間の稼働実績を上げている。
このD1はプログラムへの採択後、ヒューマノイド用の統合OSのみが存在する状態から、わずか4~5か月で機体や独自AIモデルの開発、それらの垂直統合までを達成させた。特に、AIモデルのコアとなるデータパイプラインの構築には、AWS本社のエンジニアとの議論が寄与したという。同社代表の清水正大氏は、「米国や中国が明らかに一歩前に進んでいる中で、日本にはロボットが活躍できる“現場”がある」と強調した。
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