「フィジカルAI開発支援プログラム」成果発表会を全社レポート
物流、病院、家事まで変える“フィジカルAI”最前線 AWSが支援する日本企業14社の挑戦
2026年09月04日 08時00分更新
野村総合研究所 / Highlanders / FastLabel
7番手は、課題解決の幅を広げるべくロボットのR&Dにも取り組んできた野村総合研究所だ。今回のプログラムでは、3つのアプローチでフィジカルAI領域での優位性獲得を模索している。
1つ目は「実機ロボットでのモデル開発」で、VLAモデルを学習させ、ペットボトルのピッキングに成功。今後は、より高度なピッキングへ最適化していく。2つ目は「シミュレーション環境上でのモデル開発」だ。ここでは「実環境でのデータ収集→シミュレーション環境でのモデル学習→実環境でのロボット制御」という一連のパイプラインを構築。3D再構成の技術で写真撮影による実環境との画質の差を改善しているのがポイントだという。
最後は「一人称視点データによるモデル開発」である。人目線の作業記録を基に学習したAIモデルを構築し、ロボット制御は現在最適化中だ。将来的には現場スタッフの作業データからロボットを導入できる状態を目指すという。このようなデータ収集からチーム内でのデータ共有、モデルの訓練・評価までの基盤を、AWS上に構築している。
8番手は、創業3年目となる東大発の学生ベンチャー・Highlanders(ハイランダーズ)だ。同社は、ヒューマノイドにおけるハードウェアからソフトウェア、基盤モデル開発までを一気通貫で手掛けている。現在、危険な現場での巡回・点検を遠隔化する4足型ロボット「HLQ PRO」と人間に近い身体構造と5本指のハンドを備えたヒューマノイド「N」を開発しており、後者は三菱自動車工業と連携し、2027年4月の量産出荷を目指している。
同社は今回のプログラムを通じて、ヒューマノイド向けの基盤モデル「Kepler」の開発を支える「フィジカルAIパイプライン」をAWS上で構築中だ。Keplerとは、100億(10B)パラメータのWAMで、高次プランニングを担う大脳と反射レイヤーである小脳の2階層を採用している。一方で、フィジカルAI開発の決定的なボトルネックが「高品質なデータの不足」であり、その解決の鍵になるのがロボットの量産化とこのパイプラインだ。
このパイプラインは、遠隔操作などで得られる大量のロボット動作データを集約・精製する処理、例外的な状況をシミュレーターの並列実行で補完・生成する処理、大規模GPUクラスタによるモデル学習処理をそれぞれつなぎ、24時間365日学習を回し続ける仕組みだ。同社代表の増岡宏哉氏は、「ロボットを世界中に展開して、ばらつきが少なく精度の高いデータを日々取得して、世界一のフィジカルAIデータパイプラインを作りたい」と語った。
9番手は、AIデータの専門企業であるFastLabel(ファストラベル)だ。フィジカルAI領域においては、データ収集支援やアノテーション代行によって企業のモデル開発を支えているという。
同社もプログラムを通じて、データ不足を解消するためのシミュレーションパイプラインの構築に取り組んだ。プロセスとしては、まずはテレオペで軌道データを作成し、そのデータをNVIDIAのデータ拡張技術「MimicGen」を並行実行することで約100倍に拡張する。未知の状況でも対応できるようドメインランダム化でデータに多様性を持たせつつ、リアルデータとの混合データセットを構築するという流れだ。
この混合データセットの有効性を検証したところ、実データのみで学習させた場合と比べてタスク成功率が平均14.2%向上。未学習の環境下でも高い汎化性能が発揮された。さらに、混合データによってコストパフォーマンスに優れたモデルが構築できる可能性が示され、同社の鈴木健史氏は、「こうしたパイプラインで生成したデータをモデル学習に使うこと自体がひとつの価値」だと語った。
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