「フィジカルAI開発支援プログラム」成果発表会を全社レポート
物流、病院、家事まで変える“フィジカルAI”最前線 AWSが支援する日本企業14社の挑戦
2026年09月04日 08時00分更新
ダイフク・JDSC / 竹中工務店 / Telexistence
4番手は、マテリアルハンドリング(マテハン)のリーディングカンパニーであるダイフクと、AIの豊富な知見を持つ東大発ベンチャー・JDSCによる共同プロジェクトだ。両社は2025年に、物流や生産現場のDX推進における戦略的パートナーシップを締結している。今回のプログラムを通じて両社が掲げるテーマは「物流の完全無人化」。ロボットが自律的にハンドリングし、突発的な事態にも対応できるようにする、物流の各工程に残る人手の介在をなくす取り組みである。
今回のプログラムでは、物流工程の「ピッキング」にフォーカスし、言葉での指示をもとにAIがロボットを自律制御する仕組みを目指した。具体的には、AIエージェントが人による指示を実行可能なタスクに分解し、各ステップの成否を判定しながらロボットを制御する。その開発基盤として、AWS上でのモデル学習からモデル・アセット配置までを組み込んだ、シミュレーションサイクルを構築している。
その結果、シミュレーション環境下において、未学習の商品と仕分け先の組み合わせであっても、97%という成功率での適切な仕分けを達成。JDSCの鈴木徳馬氏は、「この技術が進化していけば、現場での立ち上げ期間の短縮や品目変更への追従も期待できる」と展望を語った。
5番手は、400年以上の歴史を誇る大手ゼネコンの竹中工務店だ。2035年に最大129万人も不足すると試算される「深刻な技能労働者不足」を最新技術で補うべく、フィジカルAIに取り組んでいるという。
同社はプログラムを通じて、建設現場ではデータ収集が困難という制約を克服するためのシミュレーション環境の構築を進めた。NVIDIAのXRストリーミング基盤「CloudXR Teleoperation」を活用し、XRデバイスを用いた遠隔データ収集の仕組みを実装。さらに、AWS上のシミュレーション環境内で、データ収集からファインチューニング、検証までを一気通貫で回すパイプラインを確立した。
最終的には、実際の建設現場に近づけるための3Dアセットも自作し、VLAモデルをファインチューニングして、ロボットによる塗装作業を検証する段階まで達している。同社の田中健一郎氏は、「ワクワクする未来社会を目指して、オープンイノベーションによる共創も交え、これからも多様なDXを推進していきたい」と語った。
6番手は、コンビニなどの小売業界向けにロボットシステムを提供するTelexistence(テレイグジスタンス)だ。現在、同社が注力しているのが、ロボット基盤モデルにおいてVLAよりも実績の乏しい、動画ベースで物理法則や因果関係を学習し、次に何が起こるかを予測する「世界モデル(WAM)」へのアプローチである。
プログラムを通じて同社が取り組んだのは、非常に重いWAMを軽量化することで、店舗ロボットをリアルタイムに動かせるかという検証だ。具体的には、コンビニのレジ業務に学習データを絞ることで、10億(1B)パラメータ規模に抑えたモデルを開発。その結果、ロボット行動の大規模な事前学習をせずとも、大規模学習済みのVLAと同等のタスク成功率を達成した。
同社の佐野元紀氏は、「大規模な事前学習はもちろん重要だが、今回、アーキテクチャやエンボディメント(身体性)、個別タスクに絞ってチューニングを行うことで、(事前学習をしたモデルと同等の)成果を発揮できたのは面白い結果だった」と語った。なお今回は、AWS上で設計の異なるモデルを同時に学習させ、条件を揃えて比較できるパイプラインを構築することで、仮説検証を加速できたという。
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