台湾の台北市でアジア最大級のコンピューター見本市「COMPUTEX TAIPEI 2026」が6月2日に開幕した。かつてはPCや自作パーツの展示会として知られていたが、近年はAIを中心とした総合テクノロジーイベントとしての表情も見せている。
その証拠に、今年のテーマは「AI Together」。出展各社がいかにAIを活用するかに注力している。そんな今年のCOMPUTEXはどんな雰囲気なのか、業界は何を見据えて、どこに向かおうとしているのかを俯瞰して見ていこう。
今年のキーワードは「エージェント型AI」
人間がいちいち指示しないと動かないAIとはサヨナラ
AIの進化は目覚ましく、人間の指示を待つ単なるツールから、自律的に行動するエージェント型AIへと移行しつつある。人間のプロンプトに応答する段階から、ユーザーの意図を理解して自律的にタスクを実行するエージェントへと進化しているわけだ。そのエージェント型AIを搭載した製品が、今年の大きな目玉になっている。
まず、AI向けの半導体競争においてトップを独走状態のNVIDIAが、エージェント型AIに向けたハードウェアおよびソフトウェアの新製品群を多数発表した。Windows PCを再定義する新しいスーパーチップ「NVIDIA RTX Spark」は、終日バッテリー駆動の薄型ノートPCや、高効率な小型デスクトップPCの実現を可能にするという。「RTX Spark」搭載Windowsマシンは今秋以降に順次登場する予定だ。
AIの自律化はパーソナルデバイスにとどまらず、自動車やロボティクスといった物理的な世界にも及んでいる。そこでNVIDIAは「フィジカルAI」の分野に向けて、オープンな最先端のオムニモデル「Cosmos 3」を発表した。これは、物理法則に忠実な動画生成や行動計画の策定を可能にするもので、わずか数分の1秒で動画生成と推論を行なうとのこと。AIの高速化に欠かせない技術となりそうだ。
一方、創立40周年を迎えたMSIは、その節目にあたるこのCOMPUTEXで、最新のAIエージェントアプリケーションを披露。AIを搭載した新型ポータブルゲーミングPC「Claw 8 EX AI+」とデスクトップPC「MEG Vision X2 AI+」、そして前述のNVIDIA RTX Sparkを搭載したノートPC「Prestige N16 Flip AI+」を公開した。
世界初をうたうインテル Arc G3 Extremeプロセッサーを搭載したポータブルゲーミングPC「Claw 8 EX AI+」。8インチの120HzディスプレイやXeSS 3のサポートにより、スムーズなゲーム体験を提供する。現地特派員のKTU氏が興奮気味にレポートしている
ASRockも「ASRock Claw Quickset」というAIデスクトップアプリケーションを発表した。このアプリケーションでは、必要な複数の専門的手順をワンクリックで完了できるため、AIエージェント環境の構築が容易になる。COMPUTEX 2026のASRockブースでは、直感的なデモンストレーションが行なわれている。
ASUSは、AI開発にすべての資源を集中させるという非常に難しい決断をした(関連記事)。AI PCだけでなく、AIインフラやサーバーなどのビジネスを含め、このAIの波に乗るためにリソースを割いている。そのため、モバイルデバイス(スマートフォン)に限っては、今後1~2年間は新製品の明確な予定や計画はないという。それだけAI(とくにエージェント型)は今後のPC業界において重要な役割を担っているといえる。
ASUSは今年、ゲーミングブランドRepublic of Gamers(ROG)が20周年を迎えた。ちなみにMSIとGIGABYTEは創立40周年、ASRockはTaichiシリーズが10周年、AMDはSocket AM4プラットフォームが10周年。やたらと周年祝いが集中した年である
違う方向で話題になったのがGIGABYTEだ。メディア向けイベントで、冷却効率を大幅に向上させた独自クーラーを採用するビデオカードを披露。そのなかの1つ「AORUS GeForce RTX 5090 INFINITY」の価格が想像を超えるものだった。日本で6月6日に発売されるこの製品の価格は99万8000円前後。完成品PCではなく、ビデオカード単体で約100万円するという事実に「ついにここまできたか」と、半導体の供給不足と円安の長期化を悲観する声が多く聞かれた。
エアフローと冷却効率を大幅に向上させる独自の冷却アーキテクチャー「WINDFORCE HYPERBURST」を採用するGIGABYTEの新ビデオカード。その性能は目を見張るものがあるが、価格の衝撃度のほうが大きかった
2年前まではSDGsをスローガンに掲げていた各社がAI一色に染まる
PCパーツ関連のブースは2日目以降に細かくチェックしていくが、プロセッサーやマザーボードといった基幹パーツを開発するメーカーが、こぞって「エージェント型AI」に舵を振っていたのが印象的だった。昨年のCOMPUTEXはAIによるオーバークロックや最適化で盛り上がっていたこともあり、あと数年はPCパーツ業界でもAIブームが続きそうだ。
たしかにAIは非常に便利で、ないと困る技術にまで成長しているが、端末やPCパーツにまで搭載する必要があるのか? と言われると筆者は時期尚早な気がしてならない(むしろAIブームのおかげでメモリーの価格が急騰していることのほうが自作PCマニアにとっては気がかりである)。
「AI」というパワーワードが消費者の気を引くことは確かだが、この過熱ぶりは仮想通貨マイニングやVRヘッドセットを彷彿とさせる。これらのように「あれはなかったことに……」なんてことにならなければ良いのだが、果たしてどうなるだろうか。今年の各社の発表がきっかけとなり「AIが全部自動でタスクを実行してくれる! ありがとうAI」という明るい未来になることを期待したい。
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