「ハマチがアジを食べる」問題 だから活魚の産直は難しかった
「JID 2026 by ASCII STARTUP」 TISブースレポート。活魚仲卸の3代目が作った、魚の流通を変えるプラットフォーム「トトスマ」
提供: TIS株式会社
2026年3月3日に開催されたスタートアップ展示イベント「JID 2026 by ASCII STARTUP」。会場のTIS株式会社のブースでは、水産流通の仕組みを変える新規事業「トトスマ」が紹介されていた。同サービスは2025年12月18日にリリースされたBtoB型流通プラットフォームだ。
「トトスマ」は、活魚・鮮魚・水産加工品の受発注から精算管理までを一元化するサービス。漁村の出荷業者と飲食店・小売店などの発注業者を直接つなぎ、取引をアプリ上で完結させる。従来の水産流通では、卸売市場や仲買業者など複数の中間業者を経るケースが多い。トトスマはこのプロセスを省き、出荷業者と発注業者の直接取引を実現する。これにより、発注側の仕入れコストを最大約50%削減できる可能性があるという。
サービスを立ち上げたTIS株式会社 ソーシャルイノベーション事業部 トトスマ事業責任者の湊川賢太氏は、次のように話す。
「漁村の出荷業者の方は、生産は得意ですが、営業となると話が変わります。近隣なら自分で動けますが、全国の飲食店に売り込むのは現実的ではありません。トトスマに登録してもらえば、全国の飲食店に商品を見てもらえるようになります」
トトスマの特徴は単なる受発注プラットフォームにとどまらない。最大のポイントは、「活魚」の流通を前提に設計されている点だ。
“生きた魚”を運ぶ物流の課題
活魚とは、生きた魚を海水とともに輸送する流通形態だ。トラックの荷台に水槽を搭載した「活魚車」と呼ばれる専用車両で運ばれる。
この活魚輸送には、長年解決されてこなかった課題がある。従来の仕組みは、基本的に「1対1」、つまり1つの出荷業者から1つの納品先へ専用のトラックが走る形だ。そのため、水槽の容量が十分に使われないまま走っている活魚車も少なくない。
「今は、トラックの水槽が1つしか埋まっていない状態で走っている車両がたくさんあります。もし複数の出荷元と納品先を組み合わせて混載できれば、輸送効率は大きく上がります」(湊川氏)
トトスマが目指すのは、この活魚輸送を「N対N」の物流に変えることだ。複数の出荷業者と複数の飲食店を組み合わせて輸送ルートを設計し、トラック1台に複数の荷物を混載することで、輸送コストを参加者全体で分担できるようにする仕組みを構築する。
ドライバー不足が深刻化する「2024年問題」を背景に、活魚輸送でも効率化の必要性は高まっている。混載によってトラックの稼働効率が上がれば、輸送単価の低減にもつながる。
物流を支える2つのアルゴリズム
トトスマでは、活魚の混載輸送を実現するための機能として、特許出願中の2つの仕組みを開発している。
1つ目は、輸送ルートを自動計算する「ルート計画機能」。複数の集荷地点と納品先を入力すると、どの順番で、何時に回れば最も効率的かを自動で算出し、アプリ上に表示する。もうひとつは、水槽の積載管理機能「積荷要領」で、どのトラックのどの水槽に、どの魚をどれだけ積むのかを自動で割り当て、視覚的に確認できる。
これにより、ドライバーは細かな調整を考える必要がなく、アプリの指示通りにルートを回り、指定された水槽に魚を積むだけで輸送を進められる。
活魚物流が難しい理由
活魚流通のプラットフォームがこれまで普及してこなかった背景には、生きた魚ならではの扱いの難しさがある。魚種の組み合わせによっては、同じ水槽に入れると捕食が起きることもある。例えば、ハマチとアジを同じ水槽に入れると、ハマチがアジを食べてしまう可能性があるといった具合だ。また、魚種ごとに適切な水温やエアー量も異なるため、単純な混載が難しかった。
トトスマでは、魚種の組み合わせや輸送条件をデータベース化し、問題のない組み合わせのみを扱う「ホワイトリスト」として管理している。
ITと漁業、2つの経験から生まれたサービス
このような専門知識がサービスの根幹に組み込まれている背景には、湊川氏自身の経歴がある。同氏は、活魚の仲卸業を営む家系の3代目でもあり、TISの兼業制度を活用しながら、IT企業の社員と水産事業者という二足のわらじで活動してきた。
「水産の知識とITの知識を掛け合わせて社会の役に立てることは何かと考えたとき、全国各地の漁村を助ける事業ができるのではないかと思いました」
農産物と異なり、漁業は天然資源に依存する側面が強く、地域ごとの漁獲量は気候などによって大きく変動する。従来の1対1の取引では、ある地域で魚が獲れない日は、仕入れ自体が成立しないこともあった。全国の出荷業者がプラットフォームでつながれば、別の地域から代替の仕入れ先を見つけることができ、需給のミスマッチを減らして価格の安定にも寄与する可能性がある。
トトスマは2025年12月18日にサービスを開始し、リリースから約3カ月で想定以上のスピードで利用が広がっているという。流通の効率化によって漁業の収益性が高まれば、地域の水産業の活性化にもつながる。
さらに、新鮮な魚を安定して仕入れられる環境が整えば、飲食店や観光産業にとっても大きな追い風となるだろう。漁業、飲食、観光といった地域経済を支える産業をつなぐ基盤として、こうしたデジタルプラットフォームの役割は今後さらに広がっていきそうだ。
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