「FAXってまだあるんだ!」注文書をAIが読む。その狙いはサプライチェーン
ECはアプリで追跡できるのに……その手前はまだFAX?
ECで注文すると、アプリでリアルタイム追跡できる。「あと2時間で届きます」までわかる。配送は、もうすっかりデジタル化されたかのようだ。
しかし、その荷物が出荷されるまでの「手前」は、まったく別の世界である。メーカー→卸→小売と商品が流れる間、飛び交っているのはFAXの注文書、PDFの伝票、Excelの発注書。それを人が目で確認し、基幹システムに手で打ち込む。2026年の今でも、現場ではそんなことをやっている。
なぜ今もFAXが残るのか
「さすがにFAXはもう無いでしょ」と言いたくなるが、FAXが生き残っているのには、一応理由がある。企業ごとにシステムも書類フォーマットもバラバラすぎて、業界全体を一気にデジタル化するのが構造的に難しい。
一方で、FAXやPDFは「どの会社でも受け取れる共通フォーマット」として機能してきた。新システムを導入するより、紙を人が確認するほうが確実、という現場判断も根強い。
ちなみに最先端テックの記事を書いてる出版社でも、社内業務は驚くほどアナログだったりする。技術の話と、仕事の進め方は、ぜんぜん別の話なのだ。
「OCRなら昔からあるよね?」生成AIで変わったこと
そんな“紙のサプライチェーン”をAIでどうにかしようとしているのが、東京大学発スタートアップの株式会社route-Dだ。
「いまさらOCR系のサービス?」と突っ込みたくなるが、これまでとの違いは、生成AIの登場で「書類の意味を理解する」処理が可能になった点だ。
従来のOCRは「文字を読む」ことはできても、会社ごとに違うフォーマットの注文書を自動処理するのは難しく、人の確認が前提になっていた。route-DはそこにLLMを組み合わせて、書類の「意味」を理解させてるのがポイント。商品名・数量・納品日などを構造化データとして抜き出し、基幹システムへの入力まで自動化できるという。
加えて、物流会社向けの配車支援アプリ「D-connect」も展開している。配送ルートや車両管理をアプリ上で完結させ、受発注のデジタル化と物流管理をつなぐことで、サプライチェーン全体を可視化する設計だ。
最終的に目指すのは「AIが業務を回すサプライチェーン」
VCからの資金調達も進んでいるが、route-Dの目標はFAXのデジタル化では終わらない。
書類がデータになれば、受注・在庫・配送がリアルタイムでつながる。するとAIは、需要の増加を検知して、在庫切れを予測し、発注や配送計画まで自動調整できるようになる。要するに、サプライチェーン全体をAIが回す世界だ。
ECの世界では、注文から配送までの状況をアプリで確認できるのが当たり前になった。もしその手前の製造や物流の現場までAIが管理するようになれば、サプライチェーンの姿は今とは大きく変わるだろう。
「FAXの注文書を読むAI」は、一見すると泥臭いDXサービスのように見えるが、その裏で進んでいるのは、サプライチェーンそのものをデータで掌握する試みなのかもしれない。


































